『小さなお話し』 その33

やましん(テンパー)

『なた で ここ』

『これは、フィクションです。被害にあった、お人形さま、ごめんなさい。』


 

         🧜‍♂️


 あいかわらず、パンとお茶を買うくらいしか社会に貢献できないうちに、その日も終わりました。


 じゃ、まあ、寝ますか、と、天井の電灯を落とし、あとは枕元の小さな明かりだけになりました。


『しっくんさん。』


 だれかが、呼ぶのです。


 でも、姿はみせません。


『あたくし、死に神のもも、と、もうします。


その、ときがまいりました。さあ、まいりましょう。』


『しにがみさん? あらら、じゃ、終わり?』


『はい。おしまい。ごくろうさまでした。』


『あした、楽しみにしてた、ヴィンテージ・ラジオさんがくるんです。その、あとに、しましょう。』


『だめです。予定です。さだめです。しにがみを始めて千年、しくじったことは、ございませんわ。』


『どういう、最後?』


『えと、ちょっと、確認致します。あ、間違いない。あなたは、この、なたで、ここ、を、かちわられます。』


 空中に、『なた』、が、浮かびました。


 しにがみのもも、さまは、そっと、ぼくの、ひたいに触ったようでした。


 ぞっとするような、寒気が身体中を、駆け巡りました。


 『だ、だれが?』


 『そこは、なぞ、になることに、なります。』


 『んな、むちゃくちゃな。理不尽です。』


 『すべては、理不尽なのです。では、問答終了。いきます。』


 『わ〰️〰️、しっくんさんの、ピンチ〰️〰️‼️みんな、出てこ〰️〰️い。』


 なんだか、叫び声が聞こえます。


 そこで、みなさまの予想どおり、目が覚めました。


 また、悪夢です。


 しかし、ふと、頭の回りをみれば、庭作業用の、なた、さんが、床に突き刺さり、その周囲を、おうちじゅうの、ぬいぐるみさんたちが、取り囲んでおりました。


 くびの抜けた、お人形さんが、真ん中にいます。


 むかし、お土産で買った、お人形さんです。


 くびを、元のように、戻して、差しあげました。


 『しっくんが、夜中に、あばれたのかな。』


 夜は、とくに、明けておりました。



         

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『小さなお話し』 その33 やましん(テンパー) @yamashin-2

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