お覚悟召されい!

羽曳野 水響

はじめに。御挨拶に替えて

 これは、なにがし国民的番組「〇味の園〇」、その他、いわゆる園芸番組を御覧ごらんの皆様向けの文ではございません。

 あの番組に出てくるお花たちは、庭付き一戸建て、南向きでたりもよく、週末には庭仕事を熱心になさる、立派りっぱなオーナーさんがお持ちのお庭に植わっているものだし、解説をなさる先生がたは、もともと素晴すばらしい農園を、更に努力して、より良くなさっている、立派な方々かたがただからです。

 一方いっぽう、私といえば。

 出来できるだけ、手を抜きたい。

 さぼりたい。

 大体だいたい、土がきらいなんです。よごれるのがイヤ

 以前、東電とうでんOL殺人事件のことを書いた本を読んでいたら、この被害者ひがいしゃは、小さい頃、

ドロ遊びが嫌いだったのだろう』

などと書かれていて、それ、私の事か、と思ったことさえ、あります。

 そのくせ、自分が育てたことのない植物は育ててみたい。

 たとえ、うちには合っていないであろう植物でさえ、

「いいじゃん、買った以上は、煮て食おうが焼いて食おうが、こっちの勝手かって。」

と思ってしまう、残忍ざんにんな性格です。

 育てる環境も、ひどい。

 一戸建ての、『庭』と呼ぶのも恥ずかしいようなっちゃなスペース。引っ越して、集合住宅のベランダ。

 いずれも、西日がガンガンし、四方しほうから風がビュウビュウ吹きまくる、おおよそ園芸には不適格ふてきかくなところ。

 結果、うちにあるのは、木なのに、雑草ざっそうのような根性こんじょうの持ちぬしばかりです。

 以前住んでいたうちの、隣の奥さんには、

「あらまあ、いつも緑で一杯いっぱい。」

と言われていました。

(つまり、花が咲かない、ということ。皮肉ひにくではないと思います、多分たぶん

 でもでも。

 植物を育てているのは、「〇味の園〇」を御覧ごらんの、立派なオーナーさんばかりではないと思うのです。

 環境が悪い、おまけに、持ち主もズボラ。

 お金も、あんまりかけたくない。

 ストレスだらけの日本の社会、趣味まで頑張がんばらなきゃならないんじゃ、たまりません。

 手抜てぬきでも園芸は出来できます、と、私は断言だんげんしたい。

 ただし。

 有名な盆栽ぼんさい作家がインタビューの中で、

「なんで盆栽ってあんなに(値段が)高いんですか?」

と聞かれて、

「いっぱい枯らしているんですよ。」

 それも入っているんですね、と言われて、苦笑にがわらいしていました。

 私ごときが名人に共感きょうかんするのもなんですが、花屋の店先で苗を見かけると、あれも枯らした、これも枯らした……と、『死んだ子のとしを数える』こともあります。

 枯らすのも勉強のうち、なんですよ、負けしみみたいですけど。

 枯れたら困る、大切たいせつな植物をお持ちの方は、国民的番組を御覧ごらんください。

 私もいまだ、試行しこう錯誤さくごする毎日ですが、それでも、なんだかんだ十数年やってきました。とぼしい経験ではございますが、少しはお役に立てることもあると存じます。

 御一緒ごいっしょに、頑張がんばって参りましょう。

 では。

 Are you ready?



 

 基本的に鉢植えです。

 地植じうえと違って、限界げんかいがあります。

 花でも実でも、欲張よくばりすぎないよう。

 細く長く、を心がけましょう。



 手抜きでもオシャレな庭、っていうのは、さすがに……ムシが良すぎ。

 よく、

たいしたことございませんわ、私なんか、ラクして育ててますのよ。」

と、素晴すばらしいお庭を前にしておっしゃる奥さんがおいでですが、それは『謙遜ケンソン』というものです。

 働き者の『ラク』は、一般人のそれとは違います。

 素敵すてきな庭造りを目指めざしているかたは、別の所へどうぞ。

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