第9話・赤髪と兄弟と子供の長

ヒトラーは、歴坊に一撃をくらい、遠く先まで飛ばされていた。そして今は、ぐったり倒れていた。

「私は生きているのか?あいつに、やられたのか?」

ヒトラーの偉能力は、人を洗脳する力を持つが、

「がぁぁぁぁ―――!!」

ヒトラーの頭に突き刺さる痛みがはしり、叫び、血をそこらじゅうに、吐き出した。

「私は洗脳されていない」

「(いや、私の玩具だ。)」

ヒトラーの頭の中に声が聞こえる。声は低く、魔王のようだ。

「やめろ。もう、こんな事は……」

「(力を無くしたお前はタダのゴミだ。)」

「違う!!」

「(何も違わないさ。それは、一番自分が知っているはずだ。)」

”ヒトラー自身も、洗脳されていた”。人を洗脳する黒槍よりも巨大な「何か」に。


歴坊は目を覚ました。

「……ここは……?」

「起きた総司!!」

「えっ?」

歴坊が目を覚ますと、目の前にはナイチンゲールの顔が見えた。

「きゃぁぁぁ―――!!」

反射的に歴坊は立ち上がり、その場を逃げ出そうとした。が、

「うげぇぇぇ!!」

謎の何かに当たり、歴坊は派手に飛ばされた。

「起きて早々、騒がしい奴だな。」

「弁慶さん?そうか……弁慶の偉能力ですか。」

謎の何かの正体は、武蔵坊弁慶の偉能力”立ち往生”によるバリアだった。


熱いお茶を啜り、歴坊は心を落ち着かせていた。

「で、あれはなんなんだよ。」

いきなり、弁慶に質問されたため、歴坊はお茶を吹き出してしまった。

「今から弁慶は質問します。と、言わないと。」

話に入ってきたのは、赤髪の男だった。

「あの時のお兄さん!」

歴坊が洗脳されている人達の救助の時に会った赤髪の男だった。

「あの時は本当にありがとうございました。」

「いいよ別に。何よりも元気で良かったよ。歴坊君。」

「お前たち、知り合いだったのか。」

歴坊と赤髪の男が話していると、弁慶が割って話に入ってきた。


「そうそう、名前を教えるのを忘れてたね。僕の名前は”ヤマトタケル”。改めて宜しくね。」

「ヤマトタケル!?」

「そんなに驚くんだね。確か、歴坊君の持っている本に出てくるんだったね。」

それは、歴坊の愛読書である歴史辞書にある。

「凄いです!あの、ヤマトタケルですよ!英雄の!大和のオロチを倒したっていう!」

「うるせぇ。歴坊。頭がおかしくなりそうだ。」

「元々おかしいですよね。」

弁慶のツッコミに、歴坊は冷たい目付きで答えた。


「えっと……僕の事はタケルでいいよ。」

「分かりました。タケルさん!」

「次いでに、弁慶さんの事はハゲでいいよ。」

「分かりました。ハゲ!」

「いい加減にしろ!!お前ら!!」


「みんな今日いるよ!」

三人の話にナイチンゲールが入ってきた。

「そうか。ヒストのメンバー全員集合だな。」

「タケルさんは、ヒストのメンバーという事でよろしんですよね?」

「そうだよ。困った時は、僕に相談してね。」

「分かりました。僕はタケルさんに会えて嬉しいです。」


ナイチンゲールの先導で長い通路を歩く。そして、歴坊とナイチンゲール及び平賀源内と初めて会ったあの部屋に入った。

「おせぇ!!さっさと集まれ!!」

急に怒りが、部屋に入ってきた四人に向けられる。

「兄さん。五月蝿いよ。」

「五月蝿くない。俺はただ、怒ってるだけだ。」

「すいませんね。皆さん。家の兄さんが。あっ……」

その時、歴坊は固まっていた。目が死んでいた。

「おい、歴坊。しっかりせんか!」

今度は、弁慶が怒る。

「弁慶さん。五月蝿いです。」

「タケル、違うんだ。俺はただ、怒ってるだけだ。」

「やっぱり、この二人似てる……」

兄弟の弟らしい男がそう言うと

「誰がハゲと似ているんだ?」

「キレやすいコイツと一緒にすんなよ。」

兄弟の兄らしい男と弁慶が口論になった。

「親子ですか?この二人?」

復活した歴坊は、こっそり、タケルに聞いた。

「血は繋がってないんだけどね。」


さっきまで黙っていた源内の咳払いで、二人の口論は止まった。

「じゃあ、自己紹介するね。僕は”ヴィルヘルム”。ヴィルさんでいいよ。」

ヴィルヘルムは左をチラッと見て、自己紹介を続ける。

「こっちは、僕の兄さんの”ヤーコプ”。」

ヤーコプは目を閉じ、腕を組んで、言葉を発しなかった。

「歴坊、驚かないのか?」

「その……正直……誰ですか?」

歴坊がそう言うと、ヤーコプが口を開いた。

「なんだと貴様!知らないのか?話が違うぞ!」

「兄さん落ち着いて。そうだね。僕達のファミリーネームは、”グリム”だよ。」

そう言うと、歴坊は目を見開いた。


「”グリム兄弟”ですか!これまた、レジェンド偉人じゃないですか!!」

「そうだ。俺達はレジェンドだ。」

急にヤーコプが威張り出した。

「ごめんね。兄さんはこんなだから、僕に頼ってね。」

「そうしろ。俺には頼るな。」

「兄さん!いい加減にして!」

「すいません!ヴィルヴィル~。」

少し静かな間が空く。

「とにかく、その……宜しくだ!」

「宜しくね。歴坊君。」


「集まってるようですね。」

すると、部屋の奥から、子供がやってきた。すると、歴坊以外、頭を下げた。

「おはようございます!」

歴坊以外、元気な挨拶をした。

「えっと……この子は?」

「なんだと貴様!この方はここの長だ!」

「長?でも、子供ですよ?」

「子供、子供って、貴様も、子供だろうが!!」

「そういう事じゃ……」

ヤーコプの説教が続く中、長らしい子供が口を開いた。

「別にいいじゃないですか。ヤーコプさん。」

「でも……コイツ……」

「いやぁ、見る限り、頼りになりそうですよ?」

「その……すいません!子供扱いして!」

歴坊は頭を下げ、謝った。

「いいですよ。そりゃ、初見の方はそう思いますよ。では、自己紹介しますね。」


その子供は咳払いをして、名を名乗った。

「私の名前は”聖徳太子”です。ここ、機密組織ヒストの長をやらして頂いています。」

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