第7話・それぞれの戦い

歴坊と武蔵坊弁慶は走る。だが、黒槍によって洗脳されてしまった人々で溢れている。


「弁慶さん。とにかく僕は乱闘を止め、凶器を奪います。」

正直のところ、この場を逃げ出したい。しかし、なんのためにヒストに入り、仕事しているのか。そして、何より弁慶をはじめとする、ヒストの仲間に自分を認められたかった。


「分かった。任せる。俺はアイツの所に。”ヒトラー”の所に。」

二人は二手に別れ、戦いは始まった。


「やめてください。目を覚まして下さい。」

歴坊は乱闘の停止を試みるが、簡単に弾け飛ばされてしまう。

「やめて……」

歴坊は見てしまった。

「お願い……やめて……」

だが、それは、

「やめろぉぉぉぉ!!」

叶わず、片方によるナイフによって、もう片方への腹部へと刺した。そして、地面へと倒れた。無論、地面に血が染まっていく。

「ダメだった。俺は……」

歴坊は倒れた人へとゆっくり歩く。

「俺も死のうかな……」

近くに落ちていたナイフを手に取った。

「出来ないようじゃ……生きてる意味が無い……」

歴坊は腹部へとナイフを近づける。

「さようなら。」

だが、腹部に刺さる事無く、誰かの手によって止められていた。

「生きてる意味の無い奴なんている訳ないだろ。」

振り向くと、赤髪の男が立っていた。


弁慶は走る。ひたすら走る。

「気づいたか。」

黒槍によって洗脳された人々は今度は、弁慶の元へと迫ってくる。

「足止めか。だが、悪いが……」

弁慶は立ち止まり、目を閉じ、目を開いた。

「弁慶の立ち往生!!」

すると弁慶よりバリアが展開され、迫り来る人々を押し飛ばす。そして、道が開く。

「すみません。皆さん。あいつが……」

弁慶の目の先に、ついに、ヒトラーの姿を捉えた。


「やっと偉人が来たか。しかも、相当の手だれ。」ヒトラーは高台より、垂直に地面へと降りた。

「楽しませてくれるのでしょうか。」


お互いに近づくように歩く。

「お前か。噂のヒトラーは?」

「噂になっていたんですか?ありがとうございます。」

「悪党に礼は言われたくないね。なんでこんな事した?」

「ちょっと偉人共と勝負したくて。」

「だからって、関係ない人を洗脳したのか?俺たちが駆けつけると踏んで!!」

弁慶は怒りを露わにする。

「まぁまぁ。いいじゃないですか。貴方を洗脳してないですし。」

「早くお帰り願おうか。ゴミクズが!!」


赤髪の男は歴坊のナイフを持った手の腕を、掴む。

「さぁ、協力しよう。」

「何なんですか!?ほっといて下さい!」

「じゃあ、ほっとく。」

「えっ?」

「ほっといたら、協力してくれるんだよね?」

理解出来なかった。だが、その赤髪の男は何かある。神様のような正しい道を指し示してくれる力がある。すると、自然に歴坊は走り出していた。

「たく。世話の掛かる後輩だ。」

赤髪の男も走り出した。


「くわぁぁぁぁぁ。」弁慶とヒトラーの戦いは続いていた。

「”精神攻撃用バリア”でも……これか……」

弁慶は巨体だが俊敏で、沢山の種類のバリアを使える。だが、ヒトラーの俊敏さや素手での攻撃には叶わず、状況はヒトラーの優勢。

「その程度ですか。つまらないですね。」

「まだだ。まだ、やれる。アイツも戦っているんだ。必死に。」

「もう一人いるんですね。そっちとと戦いますかね。」

「ダメだ。お前の相手は俺だ。」

正直、弁慶も限界に近づいていた。

「しょうがないですね。初めて偉人を殺すかもしれません。」

ヒトラーの黒槍は弁慶へと迫り狂う。


歴坊と赤髪の男は、乱闘を防ぎ、凶器を奪っていった。二人だけではなく、赤髪の男の頼れる知り合い、軍隊によってそれは、実行されていた。遂に、全ての人の救済の達成する事が出来た。

「なんとか。やれた。やったあぁぁ!!」

喜びの雄叫びを上げている暇は無い。何故なら、弁慶はおそろく、まだ戦っているからだ。

「少年、まだ終わって無いみたいだね。」

「はい。ちょっと行くべき所があります。」

歴坊は再び、走り出した。


ナイチンゲールと平賀源内は、歴坊のいるとされる場所へとたどり着いた。ナイチンゲールの抱えた本、歴坊が普段持っていた歴史辞書は光っていた。

「これを歴坊君に。何か分かるはずだよ。」

同じ頃、歴坊の身にも何か起きていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る