第6話・独裁者ヒトラー
「歴坊、ちょっと外出てみるか?」 そう、武蔵坊弁慶によりちゃんとした仕事を受ける事になったのは、機密組織ヒストに来て三日後である。ヒストにある1つの小部屋で寝て、事務所室にて弁慶にこき使われていたがこの日、初仕事を任されるのだった。
「ちょっと裏の連中の情報が欲しいらしいんだってよ。」
「裏の連中?不良とか犯罪者とかですか?」 「まぁ、それだよ。後今回は俺も着いて行く。初仕事だからな。」
「足引っ張らないで下さいね。」
「誰が言ってるんでよ。後、いつも付けてるヘッドホンとかは持っていくなよ。」
ヘッドホンは事務所室内では付けてなかったが、他では基本付けていたため、弁慶に強く言われた。 「本は?」
本とは歴史辞書の事である。これは何処にでも持っていく歴坊の一番大切な物だった。
「悪いが持って行ってはいけない。そもそも、爺さんが持ってる。」
いつの間にか源内の手元にそれはあった。 「ちょっと気になっていたんでな。借りるぞ!」 「なに、心配すんな。別に悪さしないって。」 「そうですね。源内さんですし。弁慶さんだったら無理でした。」
「口が減らん奴だ……」
歴坊と弁慶の二人は早速、今回のターゲットとなる人物の情報を集める事にした。元同僚、近隣の噂、裏の情報屋を通じて沢山の情報を得ることが出来た。 「よし。この辺で取り敢えずはいいだろう。」 「話変わりますが、ヒストの他の方とか3日間見なかったんですけど?」
「それはな、元々家があったり、道端で寝たり、酒に酔って、そのまま酒場で寝てる奴とか色々だよ。」 どうやら曲者の集まりであるのようだ。 「でも、どうだ?慣れたか?生活は?」 「まぁ、取り敢えずは……」
「どうした?暗い顔して?」「やっぱりこっちの世界では、偉人達が悪さしている事が、簡単に理解出来なくって……」
すると歴坊の頬を弁慶がつついた。
「大丈夫だ。少しずつ理解すりゃいい。それに俺たちみたいに良い奴だって沢山いる。気を楽にしな。」 「お気楽ハゲだるま。」
それは突然の事である。目の前の2人の男による乱闘が始まった。それだけではなく、他の人々も乱闘、ナイフといった凶器を持つ者まで現われ出した。
「どうしたんですか?これ!?やばいですよ。」 「まさか、そんな事が有り得るのか?」
「大丈夫ですか?僕は足が震えて。」
「”偉能力”かもしれない」
歴坊は驚きを隠せなかった。何故なら、相手にダメージを与えたり、自分の強化やサポートするものだとばかり思っていたからだ。
「つまり、”操ってる”という事ですか!?」歴坊は弁慶の顔を見たが、今まで見た事無い顔で焦ってるような、むしろ、絶望した時のような顔で下を向いていた。
「弁慶さん!しっかりして下さい!弁慶さん!」
すると黒い槍の様な物が、弁慶に迫ってくるのが分かった。
「危ない!弁慶さん!」
咄嗟の判断で歴坊は、巨体な弁慶に向けてタックルを繰り出した。「痛い!歴坊、いきなり何すんだよ!」 「変な矢印みたいのが、弁慶さんの方に!」
弁慶へと迫ってきた黒槍は、どうやら、その主へと帰っていくのが分かった。
「行くぞ。歴坊、やるしかねぇ!!」
「何処に行くんですか?」
「決まってるだろ。”ヒトラー”のとこだ!!」
「ヒトラー!?」
確かに言った弁慶の放った言葉は歴坊も知っていた。
「さっさと行くぞ!」
「あっ……はい!」
あの独裁者で知られるあの”ヒトラー”が、まさかこの世界にいるとは……そう思った歴坊だったが想像以上の人物だった。
「なんだか光ってる!」
歴坊の持っていた歴史辞書が突如、光出したのだ。今は仕事中のため、持っいた平賀源内、後に暇潰しと持っていたナイチンゲールがそう、声をあげた。
「なぬ!?なんかしたのか?ゲール?」
「してないよ。ハゲだるまじゃないし。」
すると勝手に本が、動いたと思うと、一つページが勝手に開いた。
「なんか文字が現れたよ!」
「日本語だろ。ゲールも読めるだろ?」
「うん。”今こそ持ち主に返し、力を試す時”って書いてるよ!」
「歴坊君の身になんかあったのかもしれん。急いで、歴坊君の所に向かうぞ!」
「私は治療係として行く!」
「あぁ、頼んだぞ。」
二人はヒストの駐車場に向かい、二人用のバイクに乗って、歴坊の所へ向かうのだった。
一人の男は見つめる。高台より、人々の群れを。
「地獄の序章開幕だ。」
すると男の指先より黒槍が伸び始める。
「我は”ヒトラー”。又の名は”独裁者”。今、此処で人々による乱闘、殺人を命じる。」矢印は人々の群れへと突き進む。
「”偉能力”である”独裁政治”により、あの方、そして、我の復讐を実行する。」
今、火蓋が切って落とされた。
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