2020/09/13

2020/09/13


 今朝は幾分か過ごしやすい、抑朝の陽気を肌に味わう事も稀な生活ではあるが。


 何にせよ早く寒い季節が来て欲しいものだと独り言ちた。多汗の体質を抜きにしても残暑の頃は肌に合わない。最初と最後の季節が其れだったから、と言うのも一因と思う。全ての原因と言う程ではない。


 あの年の夏盛りは夕立が異様に多かった。『ゲリラ豪雨』なんて言葉が多用される様に成ったのもあの頃からだったのではなかろうか。確証は無いけれど。


 暑さに殊更忌避感を示す彼は雨の気配に吸い寄せられて窓辺に佇む事を良くした。室内に降り込む大粒の雨にも構わず雨の匂いで肺を良いだけ満たすと床の濡れたのも構い無しに一風呂浴びては午睡に落ちた。因みに午睡は夏の季語なのだそうだ。風流と褒めるには些か贅沢でだらしの無い寝姿では在ったが。


 度々思い出すのはそんな折一度の気紛れ。

 「外に出て降りだすの待とうよ」と私の手を引いた事が有った。


 アスファルトの熱気

 滴る汗を仄かに冷ます微風

 其れを追い越すように生温い風が当たる

 最初の一滴は小鼻に落ちる、既に痛い程大ぶりの雨粒であった

 直後全身を打たれる、隣から上がる悲鳴も朧に成る程の雨音であった

 言わない事は無いと傍らに目を落とせば大はしゃぎしていやがる、何が楽しいやら


 結局五分と経たず濡れ鼠二匹の出来上がりと相成り逃げるように彼の自宅に舞い戻った。上り框に濡れた衣服を積み上げて裸一貫浴室に駆け込み熱いシャワーで戯れて、その後どうしたのだったかは記憶があまり定かでない。


 何にせよ、暑い季節は嫌いだ。早く秋らしくなれば良い。


 「つれないこと言うなよ、最近も雨は多いぜ」

 「濡れるの俺だけでしょうが」

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