2020/03/02
2020/03/02
やはり酔いを伴って下りてくる彼の声は真に近いと言う確証が得られた為に些か酒量が過ぎ、頭痛を伴っての起床だった。斯様な暴飲に決した理由としては、昨夜の気がかりな発言。
「『線引き』ってのは何の話だったんだ?」
会話の流れから思い当たる節も無し、何を指して放った言葉だったのか一日気がかりに過ごしていた。
「あぁ、それかぁ」
背中合わせに腰掛ける彼は何処か感慨深そうに息を吐き吐き此方に体重を預けてくる。
「俺が、って言うより君の話でさ」
途切れ途切れ、訥々と絞り出す声に意識の過半が割かれる。
「何処まで周りに囚われず想ってくれるのかな、って」
今更の話題、とも思わない。彼からすれば懸念していて然るべき事なのだろう。口先で如何に取り繕おうと、あらゆる決定権を委ねられているのは自分の側に相違ない。どれだけ孤独に苛まれようと、彼はその手で俺を懐には招けない。同様に、今世を良いだけ生き抜いて欲しいと願っても、俺が欄干に足を掛けるのを止める術は無い。
「あまり易々約束する事でもないんだろうけどな、前にも言った通り、想い続けて生きる覚悟はあるんだよ」
無論行動で証を立てるべき事に代わりは無い。虚空から送られる返事は無かったが、背中に掛かる体重は身動ぎ頷く素振りを確かに感じた様に思えた。
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