第7話 自分はMだと思っていたけど拷問ではそんなもん関係ねぇってもんよ
「ふぁ~あ?あれ?なんだ?」
俺は目を覚ます。だけど、目の前は真っ暗。目は開けているけど真っ暗。どうやら顔に何かがかぶせられているようだ。
「えぇっと・・・・・・あれ、手足が動かな・・・・・・」
ない。足は椅子の足と縛り付けられ、手は肘置きに縛られている。しかも、糸なんかではなく、頑丈な金属のようなものが皮膚を締め付けていた。
「まっまさか・・・・・・」
誘拐?そうだ、なんでこんなことになったかを思い出すんだ。カフェからの帰り道。俺は急いで家へ、そんで道で変な女の人にあって・・・・・・。
思い出したことを後悔した。身の毛もよだつ経験が脳裏を横切る。あの声と人ではないスピード、しかも俺の頭上から飛んでくるなんて!あの瞬間、俺は死んだかと思っていた。しかし、どうやら生きているようだ。
「まっまさか・・・・・・」
幽拐?新手の手口。お化けを操り、ターゲットを誘拐するのが最近のやり方なのかもしれない。いや、んなわけない。
理解が追い付かない。もしかしたら、これは死後の世界で、俺は・・・・・・異世界転生でもしたんだろうか?まじか、縛り付けられたところからスタートするなんてまいったな。いや、んなわけない。
そうか!お化けに出会ったのが夢で、これが現実。まだ俺はカフェにいて、寝ている俺を介抱してくれた結果がこれなのかもしれない。手足を椅子に固定することが最善策だったんだ。そうに違いない。
いろんなことが起こり過ぎて、頭が混乱している。ひねり出した答えの中でこれが一番まともだろうと思えてくるのは、あまりにも悲しかった。
「すみません! 起きました! ここはどこなんですか!?」
どうか俺をこんな目にあわせている人はいい人でありますように。と願い、助けを求めた。
すると俺の声を聴いたのか、遠くからコツコツと近づいてくる音が聞こえた。その音は俺の目の前で止まり、俺の被り物をガバッと取り除いてくれた。
「あっありがとうございま・・・・・・」
目の前に現れたのは、青のスーツにハットをかぶった女性。ハットの中に髪の毛が収まっているようだ。顔立ちはキリっとしていてかっこいい女性という雰囲気だ。その女性は、俺のありがとうございま・・・・・・を聞かずに、何やら準備をしている。
被り物を取り除いてくれたおかげで、息はしやすく、目からいろんな情報を得ることが出来るようになった・・・・・・だからこそ、取り除いてくれなかった方がよかったかもしれない・・・・・・。地面は血のようなもので濡れており、壁にはまるで人の頭サイズのトマトがぶつけられたようなシミがついている。いたるところに、漫画の中でみるような拷問器具が置いてあり、実際に使われたような痕跡もある。被り物か取り除かれたおかげでなんとも言えない生臭いにおいが鼻を刺激する。
「うっうぅ・・・・・・」
どうみても、カフェではない。こんなところでコーヒーを入れるなんてありえないだろう。
「ねぇ、かわいい君」
「ひゃい!」
俺はあのスーツの女性に話しかけられた。
「カシマって男を知ってる?」
「えっ?カシマ?」
なんだろう、俺は知らないけど、どこか懐かしさを感じる名前。
「いえ・・・・・・聞いたことがないです」
そういった瞬間彼女は、はさみのようなもので右手の指先の部分を親指以外切り落とした。俺の。
「えっ?」
切り落とした?切り落とされた?えっ?床に落ちているのは俺の指?本当に?血が右手から出てる。ハハッ これ伝わるかな、まるでジオ〇グみたいな手・・・・・・!!
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、うう!ぐううううう」
なんだ?滅茶苦茶痛い! 何も考えられない!
「安心してよ、ここは異空間、現実じゃないからあんたの指は実際には切れてない。痛みは限りなく本物だけど」
「はぁ!?はぁ、ふぅふぅ」
呼吸を何度も繰り返す。段々出血が止まってきているのを感じたが、まだ痛みの感覚が残っている。
「なんでっ!こんなことお!」
「なんでって、あなたがやったんでしょ?アルデヒート人を殺したんでしょ?」
アルデヒート人?聞いたこともない。
「さっさっぱり・・・・・・」
「そう」
そうといって彼女は目の前に椅子を持ってきて座る。
「ほんとは使いたくなかったんだけどな~」
彼女は取り出した小さなカプセルを取り出す。
「素直に言ってくれたら、あんたもカシマも罪が軽くなるかもしれなかったのに」
「まって!カシマって本当にだれっ?!」
「ハハッ、地球人って本当にダジャレが得意ね」
ううん?ダジャレ? 今俺なんて言ったかも指先の痛みで思い出せない。
「最後のチャンスよ。正直に言ったら、この薬を使わないであ・げ・る」
「知っ知らないんです。ほんとに!」
カシマっていう人間を知っていると嘘でもいえば、俺は助かるのかもしれないと思ったが、いかんせん俺は嘘が得意ではないし、つきたくもない。
「あっそ」
目の前の女性はカプセルを俺に飲ませようと椅子から立ち、口にぐりぐりとカプセルを押し当ててくる。
「んぐぐぐ」
嫌だ絶対に飲まないぞ。指を問答無用で切ってくるやつの薬なんて、ヤバいやつに違いない。俺は必死に口を固め、顔を振り抵抗する。
「もう、お嬢際がわるいな~」
そう言って、彼女はカプセルをポイっと口に含み、俺の顔を両手でつかみ。動けないようにする。
そのまま、口と口を近づけ、くっつける。いわゆるキス。洗い立てのタオルみたいな香りがふわっとする。
時が止まったかのような感覚。指の痛みも忘れ、彼女の唇の柔らかさに驚いていた。いい香りもするし・・・・・・。これが初キス・・・・・・。
「おふっ」
予想外の行動に思わず変な声が漏れてしまった。しかし、それだけでは終わらない。キスが終われば吐き出してやろうと思ったのだが、彼女もそれを妨害するかのように、口を離さないし、追加でベロで押してくる。追加の追加で鼻もつままれ息が出来ない・・・・・・。
「ううぅ」
ベロ相撲の末、ゴクリ。俺と彼女の唾液で湿ったカプセルを飲んだ。飲むしかなかった・・・・・・。ここまでされれば飲むしかない・・・・・・。
「ぷふぁ!」
「ふ~、あんた舌を使うのが上手ね。思わず本気でやっちゃったわ、アハハッ」
彼女は椅子に座り、足を組んで待つ。
「いっいまのはなんの薬だ!」
「あんたの記憶を覗く薬だって。クラウの奴の発明品なんて使いたくもないんだけど、上司がこの効果を知りたいみたいでうるさくてねぇ・・・・・・、別にあなた自身に害はないみたいだから安心して。あなたが眠っているうちにすべて終わるわ」
その話を聞いている間、俺のまぶたがどんどん落ちてくる。
「そうだ、きっとあなたと会うのはこれで最後だと思うから言っとくわね」
「ふぇ~?」
「あなたの処刑方法は化け物に食べられる。よ」
その言葉の意味を理解できないまま、眠りに落ちていく。
ぼ~と走馬灯のように誰かの顔が浮かぶ・・・・・・。どう考えても、俺の知らない人達ばかりだった。
ニワタリ?セラ?凛子?モグ?カシマ?俺は本当にこの人達を知らないのだろうか・・・・・・。
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