第5話 一方その頃
時刻は7時を回り、ニワタリの屋敷でセラ、凛子、ニワタリはテーブルを囲み、鍋をつついていた。
「・・・・・・遅いですね、錦君」
セラは鍋に新しいソーセージを追加しながらポツリと言う。
「もしかしたら、面倒なことに巻き込まれちゃったのかもしれんな」
ニワタリはそう言い、ごはんを口に含む。
「めずらしいね、いつもなら5時過ぎぐらいに帰ってくるのにねっ」
凛子は膝でたち、鍋に向かってめいいっぱい腕を伸ばす。ソーセージを箸でつかみ、そのままかじる。
「んひゃっ」
中は冷たかったようだ。
「それ、いれたばかりで火が通ってませんよ」
「うう・・・・・・」
凛子はそっとソーセージを小皿に埋葬。
「カシマさんからは、何か連絡はないのですか?」
ニワタリは、懐から携帯を取り出し、カチッと開き通知があるかを確認する。
「いいや、カシマからはないな・・・・・・」
携帯を懐にしまう。
「まぁ、まじめな彼のことだ。どこかで人助けをしてるかもしれん」
そういい、鍋の白菜をごっそりと取る。
しばらくの沈黙の後、スーっとふすまが開く音がし、3人は庭側のふすまのほうを向く。
「夜遅くにすみません。錦君のことについてニワタリさんを向かいに来ました」
「モグぅ・・・・・・お前、玄関から入って来いっていつも言ってるだろ」
「すみません、近年稀にみる緊急事態なので」
ニワタリは箸を置き、立ち上がる。
「セラごちそうさま。いってくるよ」
「セラさん、凛子さん。ニワタリさんをお借りします。説明は後日させていただきます」
「はい、気を付けてください」
「いってらっしゃい!」
温かい女子二人の声援と部屋のぬくもりを背中に感じながら、ニワタリとモグは屋敷を出た。
山を下りながら、ニワタリはモグに質問をしていた。
「で、あんたが直接来るってことは、今カシマが身動きできないってとこか?」
「ご明察です。今あの人はアルデヒートという世界に居ます、錦君もそこに居ます」
「なんで彼が?カシマがやらかして、ほかの世界に捕まっちまうってんならよくあるパターンだが・・・・・・」
「詳しい経緯は後日、カシマさんから聞いてください。とりあえず、私たちはカシマさんの指示通りに動きます。時間に限りがあるので」
「なら、歩いていられねぇな」
そういい、ニワタリは懐からリボルバーを取り出し、数メートル先に向かってトリガーを引く。弾は出ず、銃声もしなかったがバリバリと空間が裂ける音がし、その亀裂から青い光がこぼれる。
「行先はどこだ?」
「姫のところです。場所は私が教えます」
「了解」
2人はその亀裂に向かって歩き、亀裂の中に消えていった。
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