ベランダに聖剣が刺さっていたから

白い黒子

琴乃錦の現世蘇生

第1話 英雄の転生

 ポチャンと俺の投げた石が川に沈む。


 僕もあんな感じで沈むことが出来たらどれだけいいだろう。


 橋の日陰で僕はしゃがみながら、日が暮れるのを待っている。


「ねぇ!あなたはここで何してるの?」


 声のする方を振り向く。ちょうど夕日が眩しくてどんな顔なのかよく見えない。


 まぁ、声からして女の子なのは確か。


「別に・・・・・・、父さんが女を連れてきてるから家に居たくないだけ」


 石を掴み、また投げる。今度はドポンっと音を立てて落ちる。


「あなた、服がよれよれね。顔も怪我して痛そう・・・・・・」


 そう言って彼女は俺の顔に触れる。身長からして、俺と同じ年かな。綺麗な銀髪・・・・・・。


 はっと我に返り、女の子の手を払いのける。


「やめろよっ」


「きゃっ」


 強くしすぎたかもしれない。でも後悔はしていない。きっと、俺はこの子と関わらない方がいいだろう。


「・・・・・・ねえ、ほかの遊びしない?そうだ!私の得意なことやってあげる!」


「へぇ・・・・・・、おもしろそう」


 嘘、別に期待はしていない。


 そういって銀髪の少女は目の前で手を組む。


「私わね~、こうやって会いたい人を祈るとね。ここに呼ぶことができるんだよ~、好きな人でも亡くなった人でもね!」


「はぁ?」


 なんだそりゃ。アニメや漫画の見過ぎなんじゃないかこの子。からかってやろうかな。


「じゃあさ、俺の母さんを呼んでみてよ」


「じゃあ、お母さんの顔と名前を思い浮かべて!」


 といい、少女は俺の手を握る。


「えっ・・・・・・?」


「うーーーーんっ!」


 少女は力を込めているようだ。綺麗な銀髪が風によるものなのかわからないが、ふわふわと浮いた。


「う~ん、おかしいな?来ないな~」


「もういいよ」


 そういえば、俺、母さんの名前も顔も知らなかった。


 母さんに会えるかもしれないと少しだけ期待しそうになったが、ばかばからしくなった。


 俺は彼女の手を振り払う。そもそも、亡くなった人を呼ぶことなんてできやしないんだから。


「う~ん悔しいなぁ。いつもなら上手くいくのに・・・・・・じゃあ、私が思う人でやってみるね!」


 そういい、少女はもう一度胸の前で手を組む。それが基本姿勢なのか・・・・・・。


「うーーーーん。思い浮かべるのは、将来の旦那様!」


 そう言って、また銀髪がふわふわ浮く。風で彼女のスカートがめくれそうになって、いっしゅんドキッとした。


「ほら!来たよ!」


 そう言い、少女は川の真ん中を指さす。


「マジ・・・・・・で?」


 マジだ。川の上にふわふわと浮く白く輝いた物体が現れた。俺はその物体から目を離せない。


「すっすげぇ・・・・・・」


「でしょ!すごいでしょ!」


 そう言い少女は手を組むのをやめた。その後、彼女の親だろうか。彼女を呼ぶ。


「姫。時間です。もういかないと」


「そっか・・・・・・、じゃあまたね」


 そういい、彼女はその親らしき人についていった。姫っていっていることは執事っぽい感じもするけどね。結局、最後まで少女の名前も顔も見ることは出来なかった。でも、またここにくれば会えるかもしれない。


「んっ?」


 俺はもう一度、石を掴み投げようとした。しかし、目の前にまだあの白い物体は浮いている。


 俺は石を置いた。


 物体はふわふわと浮き、まるで彼も家に帰れないのだろうかという雰囲気を感じ取る。


「なぁ、お前はなんなんだ」


 俺は吸い寄せられるように、彼のもとへ。もしかしたら、彼も急に呼び出されて迷子なのかもしれない。


 川の中へ足を入れる。冷たさは特に感じなかった。


「・・・・・・」


 白い物体は何も言わない。ただ、そこに浮いているだけ。もやもやと。


「なぁ、お前も一人なのか・・・・・・」


 そういい俺は手を伸ばし、白い物体に触れようと足をさらに一歩踏み出した。


 白い物体に触れたその瞬間、足は水中での支えを失って俺は水の中へ。


「やっっばっ!」


 しまった、こんなに深いところがあったなんて・・・・・・。誰か助けて・・・・・・


 そのまま、急流で流される


 苦しい、助けて、誰か・・・・・・











「ハッ!!」


 自分は布団から飛び起きる。汗びっしょり。


 なんだろう嫌な夢というか、懐かしい記憶を見ていたかもしれない。


 となりで、ニワタリがぐーぐー言っている。畳の香りが俺を落ち着かせる。

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