周囲の無理解に微笑みで返す、我らが英雄

 全国を目指して、まず駅に向かったが、その途中、子供たちの笑い声が聞こえた。


「何あれー?」

「誰ー?」

「カッコ悪ーい!」

「ヤッベエ!!」


 円筒型の、頭全体を覆う出来の悪い兜のせいで前が見えづらいが、自分の存在によって、街が明るくなったことを、ヒデオは感じとった。


「うむ、英雄たるもの、これくらいできなくては。存在だけで、人々を幸せにする。ハハハ」


 駅に着く前に、何者かが声をかけてきた。


「あの、すみません。何なさってるんですか?」

「何とな?」

「はい。あの見えてますか? 私、交番の者なんですが」

「交番? あ、警察であるか?」

「はい。こんな格好で何を――」

「お前たちがやるべきことをきちんとやれていないようだから、ワシが代わりに悪党を征伐してあげるよ(ニコッ)」


〈ワシ〉とか言ってるが、ヒデオはまだ27歳だった。若いのにこの心がけ。我らがヒーローは、何とも素晴らしいではないか!!


 ところが警察(巡査)――


「なるほど。ちょっと来てもらっていいですか?」

「ワシは急いでおるのだが。早くしないと世界が――」

「いや、町のみなさん不安になってますし、怪しんでますし」

「分からんのか? みな、笑顔になっていることが。笑い声がたくさん聞こえてくるではないか」

「それ、バカにされてんだっつーの……」

「え?」

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