英雄と書いて〈ヒデオ〉という名の男の英雄譚

ひろみつ,hiromitsu

我らが英雄、いざ出陣

 ヒデオは英雄だった。ヒデオの名は「英雄」と書いてヒデオと読むのであり、かつ、実際に英雄、つまりヒーローだった。


 ここではヒデオの名を、漢字表記の「英雄」と書くと、この物語で頻出する、ヒーローを意味する〈英雄〉というワードと混乱するので、あえてカタカナ表記の「ヒデオ」とする。そう、「ワタナベ」みたいにね。


 ヒデオは鎧に身を包み、剣と盾を手にして、悪党征伐の旅に出ましたとさ。アーサー王のような、いや、むしろ、ドン・キホーテのような感じで。この現代の日本で。鎧も剣も盾も、鉄板を持ち前の板金技術でそれっぽく作っただけのもの。


 しかしながら、彼自身は完全に、中世ヨーロッパの騎士のマインドであった! そのバカさ加減は、現代のドン・キホーテ。あな、恐ろしや!!


 一人暮らしの味気ないアパートを出て、薄っぺらい鉄板のせいで、ガシャガシャというよりキーキー耳障りな音を立てながら、生き勇んで時速2㎞ほどで歩んでいく。剣と盾を持った両手を前に突き出したまま。かなり歩きづらそうに。

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