二次元ぼっちのプロデュース
A.2
ぼっちのお昼
俺、
俺は今日も校庭を見渡せる窓際一番後ろの特等席で、教科書の裏に隠した漫画を楽しく読み、疲れたら一眠りするという本人にとっては充実した授業を受けていた。
チャイムが鳴り授業が終わる。
今からはお昼の時間だ。
クラスメイト達は仲のいい友達と集まり、弁当広げて楽しく談笑しながらお昼を食べ出していた。
俺は言うまでもなく、一人である。
しかし、一人だからと言って寂しさは全くない。
むしろ気楽。
スマホでアニメを観ながら飯を食べる。
一人なので誰にも邪魔されず飯もアニメも堪能できるのだ。
これは他人と飯を食べていたら絶対にできない。
やっぱりぼっちは最高だせ!
そんなことを思いながら、スマホにイヤホンを挿し、弁当を広げようとしたその時。
「おい! あれ見ろよ! 校庭の方!」
誰かがそんな声を上げた。
「なんだよ何がある……、うおぉぉぉーーっ! あれは!」
最初に叫んだ奴に手招きされた男子が校庭を見て更にデカい声を上げた。
っていうか、俺の頭の後ろでうるせーよ!
「なになに? あっ! ワンちゃんだぁぁーーっっ!」
もう一人校庭を見に来た女子が叫んだ。
その言葉を聞いた瞬間、クラスにいた生徒の大多数が窓際に迫って来た。
「ホントだ、犬だ! 可愛い!」
「かなり大きい犬だな! なんて犬種だ?」
「あれはゴールデンレトリバーですね。イギリス原産の大型犬です。賢さ及び忠誠心を兼ね備え、穏和な性格の犬種であるためペットとして広く愛好されている。また、活発な性格で探究心があり……」
一人ウィキペディアみたいな奴がいるぞ。
っていうか、こいつら皆窓際に集まってきやがって邪魔だ! 小学生がこいつら! 飯が食えん! アニメの音が聞こえん!
俺は堪らず席を立つ。
弁当を抱えて教室を飛び出した。
「人の楽しいひと時を邪魔しやがって。っていうか、あいつら犬で騒ぐとか小学生か」
文句を吐きながら俺は廊下を足早に歩んで行った。
********************
階段を駆け上がると、扉が見えてきた。
この扉は屋上に出る為の扉だ。
普段は鍵が掛けられており、屋上へは行けないのだが。
俺はポケットに入れた財布を取り出し、更にその中から鍵を取り出した。
俺はあるコネにより屋上の鍵を持っているのだ。
ぼっちにどんなコネがあるんだよと思うかもしれないが、その話はまた今度語るとしよう。
今は安心して飯とアニメを観れる場所を手に入れることが先決だ。
扉のノブの鍵穴に手にした鍵を突っ込む。
その時、違和感を感じた。
「あれ? この扉空いてる?」
おかしいなぁと思いながらもまあいいかという気持ちにすぐ切り替わり、俺は扉を開けた。
外は青い空が広がり、最高の天気。昨日が雨だったから尚更今日が綺麗な空に見える。蒼天に思え! 蒼天に願え!
気持ちの良さにテンションが上がり、るんるんと足を進める。
「あんた、こんなところで何してんの?」
不意に声をかけられ、ドキッと心臓が大きく脈打った。
俺は周囲を見渡す。
すると声の主らしい人物が屋上の柵にもたれかかっているのが分かった。
胸元のボタンを外し着崩した制服でスカートは膝の位置よりも短い。
盛りに盛られた金髪が風に煽られ、ふわっと揺れる。
俺はそれが誰かを理解した。
同じクラス。席は廊下側の後ろから数えて二番目。そしてクラスの上位カーストに位置するギャル。
「ちょっと人の話聞いてんの?」
面倒くさいのに会っちまったなぁ〜。
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