たまには私も見てほしい

ぴで

第1話 すぐ泣く好きな男の子

「うっうっうっ」


 私の隣の席で情けなく泣いている男の子がいる。私はいつも通りの事なのでスマホを眺めていた。


「静流(しずる)〜聞いてくれよ」


 情けない声を出す男の子は私に話しかけ、メガネのレンズを一度拭き彼の方へ視線を向けた。


「ヒロキどうせまたフラれたんでしょ」


「どうせとかひどい言い方するなよ〜」


 この男の子の名前はヒロキ。高校入学して同じクラスになり、たまたま隣の席になった間柄だ。


 初めて教室で会った日もこんな風に泣いていた。さすがに初めて会った隣の人が泣いていたら気になるし放っておけない。


 理由を聞いてみると、校庭で発表されていたクラス表を眺めていた時に出会った女子がいたらしい。


その子を見た瞬間ビビッときたらしい。


つまり一目惚れだ。会ったばかりにも関わらず、告白したらしい。


 結果はフラれダメだったらしい、まぁ入学初日からなかなか告白されてもよほどのイケメンじゃない限りフラれるだろう。


「とにかく可愛い、顔が好きだった!うっうっうっ」


「そこまで顔を重視して好きって言えるアンタはそれはそれですごいよ」


 ヒロキはどうも惚れっぽいのかフラれてもすぐ違う子を好きになり、告白してはフラれた。そんな事を繰り返しもう一学期も終わりに近い。


「またフラれたよ、何がいけないのかな?」


「ヒロキはいつも喋った事ない子ばかり好きになるからなぁ、なかなか初対面でオッケーって言う人はいないんじゃないかな」


「僕だって好きで告白してるんじゃなくて好きになってしまったから告白してるのにな、こんな惚れっぽい自分が嫌になるよ」


「惚れっぽいって自覚してるだけまだましかもね、……私ちょっとトイレ行ってくる」


「普通女子がトイレ行くとかそういう事言う?だから静流とは話しやすいんだけど」


「まぁそういうなって、とりあえず早く落ち着けよ、じゃあ」



トイレに着くと私1人だった。鏡を眺め自分の顔をまじまじと見た。


 なんとか冷静さを保ちつつここまで来れた。もう少しで自分の想いがあふれそうだった。


 ネットの時代とも言えるこの現代において、告白すると言えば皆スマホで済ます事も多いというのに、ヒロキは告白だけは直接言いたいという珍しい方の人間だと思う。


 フラれてはすぐ泣く情けない男の子だか告白するには正面からぶつかるそういうところだけは変に男らしい。


 いつの間にやらそんな一生懸命なヒロキを見てるうちに好きと思うようになってしまった。


 泣き顔も可愛いと思ってしまっている。


 私はヒロキが好きだ。


 ヒロキが誰かを好きになったという話を聞くたびにモヤモヤし、涙が出そうになる。それは悲しいからなのか悔しいからかはわからない。


 わかるのはヒロキの事を想ってる。


 しかしヒロキが犬のような懐っこい性格というならば私はどちらかというと猫だ。今はまだ自分の気持ちを打ち明ける勇気はない。


「私もそんなに顔は悪くないと思うんだけどな」


 メガネを外し鏡に映った自分にそう言う。


 いつかヒロキが私の事も好きになってくれないかな。でも一目惚れはなかったからチャンスはないのかも。


 もうすぐ長い夏休みだ、ヒロキをデートにでも誘って私を好きにさせたい。


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