この世界、君はどう生きていますか?

 機械のように働き、生き、息をし、また、寝て働く。

 それだけである。

 ただそこに喜びはない。

 ただ一つあるとすれば、給料日に給料袋を覗く、その時だけ。

 快感はない。

 苦しみしかない。

 目の前にあるのは、暗雲であり、安寧ではない。

 若者の頃に戻りたい。

 あの時の体力のある自分に戻りたい。

 白髭を携えながらも、こんな労働をしていたくない。

 こんなところで、働きたくはない。

 もうすぐ定年だ。

 しかし、達成感もない。

 なんの感情もわかない。

 友人のほとんどは家庭を築いている。

 私は、どうだろうか。

 ただ生き、仕事のために全てを犠牲にしてきた。

 いつしか自分は独り身。

 家に帰るもゴミだらけ。親も死んだ。

 後悔ばかりの人生だ。

 変わることはもう、ない。

 遅い、戻りたい、遅い。

 起死回生の時を計ったことはあるか?

 ない。

 今を脱しようと、固い決意を携えたことはあえるか?

 ない。もう、遅い。

 死ねればよかった。

 だが、迷惑がられるだけだ。

 あの頃に時戻りたい。

 時代が自分を生かしている。

 孫に囲まれた生活をしたかった。

 指示待ち人間だったあの頃でも、それでも戻りたい。



 全てが、遅かった。

 踠いて上の空に手を伸ばしたって、掴めるのは、自分の命だけを存えさせる、紙切れだけ。

 挑戦すればよかった。

 後悔しても、恨みを買っても、自分のしたいことをすれば良かった。


 癌にかかった。

 既にもう末期で、余命は幾ばくかしかないと。

 そう、淡々な口調で言われた。

 頷くしかなかった。。

 涙は、出なかった。

 余命を知っても尚、変わらないモノは変わらない。

 ただ、後悔だけが募って募って….。



 後日、死体が発見された。

 首吊り自殺。既に腐っていた。


 近くには、彼の学生時代のモノと思われる遺物が、多数発見された。

 まるで、嘲笑っているかのように、死体を見つめていたそうだ。


 刑事は言った。

「気持ち悪りぃな」

 ──────と。


 あなたにも、こんな結末が訪れるかも知れない。

 今すぐに動け。



 私のように。

 死んでしまった私のように、ならないように。

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