考究のベア

凍ノ絵しらたきを

プロローグ【終わりの日】


「君のはどうだったかな?」

 静寂せいじゃくの中、続けて彼は言う。

「私にはとても――」

 

 彼は足元にいる猫に視線を移した。猫はただじっと静かに、されど、うちに沈めた激しい感情は熾火おきびのように燃え続け、瞳だけが揺らされていた。


 「続きは珈琲でも飲みながらにしましょうか」

 呟くように言うと、彼は空を見上げ少し微笑んだ。

 

 緋色ひいろの空が少しさびしげに黒く染まった。 

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