Nightmare
うみのも くず
Prolog
今日もオレの周りには煩ぇ奴らが話している。
何でそこまで盛り上がるのか分からない。
その姿はまるで人間だ。
普段から残酷なことをしてるように見えない。
ここは魔界。奴らはオレと同じ…悪魔だ。
そしてこの魔界には悪魔の住むホテルのような城がある。
一階のロビーは悪魔の娯楽の場となっており、よくこうやって団欒しているのだ。
オレは城を管理し、こいつらを仕切るいわば魔王。
だからこそ、こんな雑魚とは付き合ってる暇などない。
呼び止められた気がしたが、それを無視して通り過ぎる。
「子どもの頃って無邪気でいられたよなぁ」
「関係ないでしょ、悪魔なんだし」
…昔…子どもの頃…
聞こえてきた言葉に体が硬直した。
不意に心が疼き、揺らぐ。
恐怖がオレを襲い、思考に纒わり付く。
辞めろ…思い出したくもない。
まだオレは囚らわれているようだ。
いつになっても。
永遠と心の奥深くで渦巻いている。
いつになったら…この恐怖から抜け出せるのだろう。
考えたところで意味は無い。
気にしないことが一番だ。
「鬼利さん…?」
足元を見るとマフラーをした小さな少年が心配そうに見上げていた。
オレの数少ない理解者で、最も愛しい存在。
途端に緊張が解れ、恐怖が和らぐ。
「なんだ…イキル」
「何かあった…?」
「別に何も…お前は皆と話してろよ…」
「…分かった…」
どことなく不安そうな顔を浮かべつつも、イキルは離れていった。
別に、とは言ったが正直今日は調子が悪い。
「一旦部屋に戻るか…」
オレの部屋は最上階にある。
自分の部屋に通じるエレベーターのボタンを押す。
突如、頭が疼いて激痛が走った。
慌ててエレベーターに乗り込む。
「……ッ!!」
まずい、いつもの発作だ。
駄目だ…ここで倒れたら。
震える手で無意識に閉のボタンを連打する。
一刻も早く部屋に戻らねぇと。
暫くしてチンッという音と共に扉が開かれる。
意識が朦朧としながらも自分の部屋に飛び込む。
頭痛が酷くなり、体全身に激痛が走る。
「うぅッ…!」
痛い。苦しい。
喉が締め付けられ呼吸が出来ない。
苦痛の余り声にならない叫びをあげて空を掴む。
耳鳴りが響く。
意識が遠のき、深い闇に落ちていく。
どす黒い何かが体を蝕んでいく。
嫌だ、嫌だ、恐い。
「…い…やだ…ッ」
…あぁ…またオレは悪夢に誘われてしまった…
これは逃れることのできない俺の…
頬に一筋、何かが伝った。
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