第123話【普通のデート】

数曲ほど歌うとすぐに終了の時間が来た。

急遽入ったため、1時間でオーダーしていたのだ。

2人は荷物を片付けると最後にもう一度だけキスをした。

脳を溶かすような気持ちの良い感覚に襲われるが、それをもっと長く堪能する時間はなかった。

恐らくこの部屋を出れば再びキス出来るのは凛華に言われた通り涼介が文化祭で凛華に告白してからだろう。

それまでの3週間はお預けである。


涼介は深呼吸をして気持ちを切り替えてから部屋の外に出た。

それから会計を済ませると2人は再び街中を歩き始めた。

さっきよりも歩くのがぎこちないのはカラオケでのことを気にしているからだろう。


凛華はそのことに気がついているのか笑って涼介を見ていた。


「先輩歩くのが遅いですよ」


「……ちょっと疲れたんだよ……」


凛華がいる方向とは違う方向に目を向けながら涼介はそう言った。


「本当ですかぁ?

違う理由だと私は思うんですけどねぇ」


悪魔のような笑みを浮かべそう言ってきた。


「な、なんでもいいだろ……」


「動揺までして可愛いですねぇ」


手を繋いでいるためお互いの顔の距離は近いため相手がどんな表情なのかすぐにわかってしまう。


だから涼介は誤魔化すように当たりを見回して何かを探した。


そして目についたのがアクセサリーショップだった。


「ちょっとそこに寄らないか?」


「いいですけど、先輩何か欲しいものでもあるんですか?」


「まぁ……そうだな

付き合い始めたカップルがアクセサリーとかお揃いのつけたり、ペアのやつ付けたりするからそれも悪くないかと思ったんだ」


涼介が凛華に何かを上げたのはぬいぐるみを取ってあげた時だけだった。

その時もゲームセンターで取った品だったためちゃんとしたやつではない。

だからこの際お揃いのでもなんでもいいが何かをあげようと思ったのだ。


それに涼介も普通のカップルのようにものをお揃いにしたりするのに憧れていたのだ。

だからちょうど良い機会なのだ。


「………行きましょうか」


そう言った凛華は先程までの元気がなかった。

乗り気では無いのかと思い涼介は凛華の方を向くと凛華は顔を逸らした。

しかし、凛華の耳は赤くなっており照れているようだった。


「凛華も照れてるんだな」


「わ、私は照れてない……です

照れているのは先輩だけですよ」


凛華はそこで1度言葉を切った。


「ただ、先輩からそんな提案されるとは思っていなかったので嬉しい……です」


凛華のその言葉に涼介も顔を赤くした。

お互いにダメージが入り無言になったが変わりに握る手を更に強くした。


◇◆◇◆◇◆


それから店の中に入りアクセサリーを選んでいるといつもの調子に戻っていた。

涼介は最初くっつけるとハート型になるアクセサリーを買おうとしていたが、凛華が引き裂かれた心みたいだと言ったため、却下となった。

そんな感じでこれはどうだと話しているとお互いの好みや趣味趣向など知らなかった一面を知る機会となった。


そして、最終的に凛華は小さなハートがついたペンダント。

涼介には小さな星がついたペンダントとなった。


購入後2人はそれを付けて残りのデートを楽しんだ。

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