先輩にだけ素を見せる後輩は好きですか?

マカロニパスタ

第1話【ナンパされてる後輩を救ってみた結果】

高校生活とはアニメのような順風満帆なものを想像するだろうがそんなものは無い。


この作品の主人公ーーー橘 涼介も同じように何事もなく、高校二年生の9月に突入していた。


火曜日の放課後、ホームルームが終わると涼介は帰宅するために荷物を片付け始めた。


「涼介は今日部活来ないんだね」


そんな涼介に話しかけてきたのた見た目爽やかイケメンは涼介と中学の頃からの付き合いがある中村司だった。


「あぁ、悪いな、眠い」


そう言うと涼介は大きく欠伸をした。


「はは、相変わらずだね」


「まぁな、じゃあまた明日」


涼介は荷物を入れたバッグを持つと挨拶をしそのまま教室を出ていった。


あー、今日も終わった…疲れた…


そんなことを考えながら歩いていると校門の前に見知った顔の人物が居た。


確かあいつは司の妹の凜華だったよな、何やってんだ?


客観的に捉えると、凜華は大学生くらいの男4人から話しかけられている状況だった。


ナンパか?どう見てもあいつ嫌な顔してるのに、そんな状態で話かけ続けるなんて勇気あるなぁ…


そんな事を思いながら涼介はそこを通り過ぎようとしていた。

だが、涼介は進行方向を変えナンパ大学生の元へ近ずいた。


別に見返りを求めているわけではない、ただ、知り合いが困っているからただそれだけの理由で涼介は助けることにしたのだ。


「あ、すみません、お兄さん方」


涼介は大学生達を怒らせないように声のトーンをいつもより高くした。


「あ?なんだおめぇ?」


いきなり話しかけられたことに大して怒っているのか少しキレ気味であった。


「あ、僕はコイツの連れなんですよ、

ちょっと待っててもらってただけで、このあと予定があるですよ

そうだろ?」


涼介は合わせろというニュアンスを込めた目配せをした。

伝わったのか彼女は頷いた。


「チッ、彼氏持ちかよ、あー、萎えた萎えた

ゲーセン行こーぜ」


1人の掛け声でほかの3人も撤収して行った。


「おい、大丈夫か?」


ナンパされていた彼女……凜華に声をかけた涼介の声はいつものものに戻っていた。


「あ、ありがとーございます……先輩」


凜華は頭を下げた。


「あー、うん、まぁ、気をつけろよ」


そう言うと涼介は立ち去ろうとしていた。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ先輩」


涼介は足を止め振り向いた。


「なんだよ?」


「いや、なんで助けたか気になりまして」


「いや、別に深い意味なんてないよ、ただ、知り合いが困ってたから助けた、ただそれだけの話」


それを聞くと凜華は目を大きく見開き、少し笑みを浮かべた。


「そんなこと言ってぇ、せんぱいが私にナンパしようとしたんじゃないですか?」


首を少し斜めに傾け、指で顎を押えながらそんなことを聞いてきた


「べ、別に…そんなことをしようとは思ってないぞ?」


こいつこの表情わざとだろ、自分が可愛いと理解し、それを活かしていやがる


「あれれー?

先輩今ドキッとしましたね?」


小悪魔、涼介は一瞬そんなことを思った。


「お前のこと助けなきゃよかったわ」


本心からそんな言葉が出てしまった。


そしてそのまま涼介は歩き出した。


「いやいやぁ、酷いじゃないですか先輩

冗談ですよ、場を盛り上げようとですね」


「あー、はいはいわかったわかった」


「もー、適当じゃないですか!!」


凜華は涼介に追いつくために小走りで近寄ってきた。


「いや、来んなよ」


「違いますよーだ、私も家こっちなんですぅー」


コイツうぜぇなぁ


「あー、そっかお前司の妹だもんな、俺とも家近いもんな、」


「そーですよ、だからこんなにも可愛い可愛い私が先輩なんかに構うためについて行ってるわけじゃないですよ」


舌を出しべーっとしてきた。


「なぁ、1発殴っていいか?」


涼介は指を慣らし殴る準備を始めた。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、先輩

女の子を殴るなんて、酷いとか可哀想とか思わないんですか?」


捨てられた子犬のように目に涙を浮かべた


「残念だったな、俺は男女平等主義なんだ、だから、平等に殴る」


それを聞いた凜華はジト目になってこっちを見てきた。

それから急に笑いだした。


「先輩面白いですね

兄さんとあんなに仲いい理由が少しだけわかりましたよ」


「いや、あいつは誰に対しても優しいだろ?」


「いやぁ、まぁ、そーなんですけど、ほんとに親密なのって舞先輩と先輩だけじゃないですか!」


その事を聞いて確かにそうだな、と思ってしまった。

しかし、疑問に思ったことが一つだけある。


「お前……俺の名前覚えてないだろ?」


凜華は少し震えながら苦笑いをした。


「いやぁ、まぁ、覚えてますよ?

もちろん覚えてますとも、はい、」


早口にそんなことを口にする凜華の目は涼介と合わせようとせずそっぽを向いている。


「はぁ……橘 涼介だよ、同じ部活のやつくらい覚えておけよ…」


「いや、覚えてましたとも、でも、先輩も悪いと思いますよ、部活に来ないんですもん

先輩のこと3回くらいしか見たことないですよ?」


「確かにそーだが、普通覚えるだろ?」


「まあ、まぁ、そんなことはいいじゃないですか」


「いや、良くないからとりあえずここいらで1発殴って…」


そう言おうとした途端凜華は走りだし、涼介の数歩前にきた。


「先輩、今日はほんとにありがとうございました

先輩と話すの楽しいのでまた話しましょうね!」


それだけ言うと凜華は曲がり角を曲がって行ってしまった。


「たく、あいつ……

つか、キャラ今までとは全然違くね?」


もしかしたらこれが涼介の青春という歯車の回り始めだったのかもしれない。

今わかることは、ほぼ初めて話した親友の妹であり後輩でもある彼女がウザかった、ただそれだけだった。

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