文化祭の夜

橋本鴉

第1話 前日

 ダメだ、何度やっても音が合わない。

文化祭はもう明後日だ。明日には有志ステージの予行演習があって、通しで演奏しなくてはならない。

どうする、かなり厳しい状況だ。

「何故練習しなかった?」と言われるかもしれないが、ベースの太一とドラムの和希は大学入試を控えている。

他にも学校の課題だってあるし、なかなか時間が作れないのだ。

そんな中、スタジオでの練習を無理強いするのもきついだろう。。。


「なぁ、やっぱキャンセルしない?さすがにこれ、厳しいよ。」俺もそう言おうとしてたところで和希が言い出した。

うちの学校の文化祭の有志ステージは全校生徒が見学するスタイルで、うまくいけばヒーローになれるけれど

失敗したら大恥をかくことになるのだ。


 翌日、学校にて。予行演習が開かれ、俺たちは重い口を開くように言った。

「すみません。何度練習しても曲として仕上がらなくて、文化祭の出演キャンセルできますか?」


 文化祭担当の田代先生が言う。「君たち、時間はたくさんあったはずです。今回の文化祭だって3年生を優先したわけで、

1度きりしか文化祭の年が回ってこない2年生にも出たい子達がいたことを知らないのか?恥を知りなさい。」


と、かなりクドクドとイヤミを言われてしまった。

「ったく、そんなこと言われたってしょうがないじゃんなぁ!受験だってあるんだし!」帰り道、太一が文句を言っている。

「はぁ、今年も結局陽キャたちが騒いでモテて終わりかよ。つまんね。」和希が愚痴をこぼす。

 さすがに俺は「お前らがもっと練習すれば・・・。」なんて責めることはできず頷いた。

「まぁ、切り替えて楽しまないか?美味そうな屋台も出るしさ!」落ち込む二人にそう言うしかなかった。

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