爪隠し過ぎたらハイスペックコミュ障になった件

@Ha_re_B612

第1話 能ある鷹は爪を隠す

「能ある鷹は爪を隠す」


約10年前、当時小学生であった僕、神谷かみや 在人ありとは幼いながらもこの言葉にとても惹かれた。普段は才能を表に出さず、いざという時に真価を発揮する。


「なんだそれカッケー。」


そんな人間になりたいと思った。そのためにはまず隠す為の爪を持とうも思った。


僕は決して何かの才能に溢れていた訳ではない。しかし要点を理解することに優れていた。そして目的の為ならば努力できる人間だった。僕はありとあらゆる才能を身につけるために最大限の努力をした。いつのまにか僕は自らの爪を磨き、ハイスペックな人間になることに重きを置くようになった。幸いなことに我が家は裕福だったので、したいと言った習い事は大体させてくれた。超英才教育受け、友達と遊ぶ時間などない程、ステータスをあげることに全フリした。


そして僕は高校生になった。


Question

ステータス向上に全フリした人生を送ってた人間が、自らのステータスを重視する高校に入ったら、どうなるか。


Answer

超ハイスペック陰キャになる。





高校の入学式が終わって1ヶ月が経とうとしていた。朝から僕のクラス1年5組は騒がしい。かなりグループも確立してきて、アイドルがどーだの、駅の近くにできたカフェに行きたいだの、他愛もない会話が繰り広げられる。


「はよー」


ガラガラと教室のドアを開けて入ってきたのは2個前の席の碓氷うすい 新太あらただ。見るからに陽の匂いを感じる。身長170cm後半はあり、スポーツ系と言うよりはチャラい系のイケメン。僕の通う私立京洛高校は校則が緩く過度でなければ髪型の変形も認められている。そのために碓氷 新太は1年生でありながら髪を明るめに染めてワックスで遊ばせている。見るからに女の子でも遊んでそうである。


「おはよ。眠そうだね」


もちろん挨拶をされたのは僕ではない。


返事を返したのは有馬ありま 透とおる。目立つ訳でないが整った中性的な顔をしている。髪型は少し長めの落ち着いた感じの茶色で、身長も小さく女子に可愛がられそうな見た目である。話し方にも優しさを感じる。


「ねみーあんま寝てねー」


「今日小テストあるよ。勉強した?」


「するわけないだろー」


「だよねだよねー」


2人の会話を隣で聞きながら、僕は周りなんて知ったことのないような顔で本を読んでいた。だがしかし!本当は自分が話題に入れる隙がないか超伺っているのだ。本の内容などほとんど頭にはいっていない。


「今日体育あったよねー?永遠とレイアップ出来ないんだけどコツとかないの?」


「えぇ知らん、感覚だろあんなん」


ここだぁ!!!問題ない!バスケなら得意だ。ここでコツを教えて仲良くなるべし!思い切って僕は2人に話しかけた。


「あ、あのっ!」


「ん?…なに?」


急に喋りかけられた2人が怪訝そうに振り返った。

特に悪意などはないのだろうがその目が僕の体を強ばらせた。


「えっえっと、あの」


やっべー言葉が出てこない。「レイアップは手だけじゃなくてジャンプが大切なんだよ。ボールは置いてくるイメージですると上手くいくよ!」って言いたかったのだが頭が真っ白だ。


「…?」


「なに?何か用?」


2人は顔を見合わせてこちらの様子を伺ってる。

せめてRPGみたいに選択肢だしてくれと願うもののコマンドなど出るはずもなく…


ここで時間切れ。SHRの開始を告げるチャイムがなった。


「用がないなら俺らいくから」


と2人は自分の席に戻っていった。あぁ今日も失敗だ。入学してからほぼ毎日このような会話をクラスメイトと繰り返している。


勉強もスポーツもひたむきに1人で努力し続けてきた。結果がついてくるようになり僕には力がついたのだと思っていた。だけど、僕は見落としていたのだ。1人では絶対にあげることが出来ないコミュニケーション能力。高校生活において、いや、人生に置いて最も大切な力の存在を。


え?友達ってどうやって作るの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る