今の気持ちの書き留め ~自分を変えた地下アイドルとの出会い~
黒ノ次 白
書き留め ~ある地下アイドルとの出会い~
怠惰に日々を貪り、時間を無駄にして行く毎日。
やりたいこともなく、やらなければいけないことはあるがそれを実行するための一歩がなかなか踏み出せない。
昼に起きる。飯食う。ゲームかアニメ。風呂入る。飯食う。寝る。そんなルーティンをひたすら続けるだけの毎日。
いったいどこに何の意味があるのかわからない。
平凡が幸せだと言っていたかつての自分は、いったいどこに行ってしまったのだろう。
今は幸せに対してこう思う。忙しい日々の中で自分の好きなことをする時間が幸せであるのだと。
幸せを貪り続けてしまうと、それは幸せでなくなるのだと初めて気づいた。いや、幸せには違いないが自覚がなくさらに上の欲求へと進んでしまうのだろう。
幸せを噛みしめることができるのは、今を必死に生きてかつ成功した、もしくは娯楽や家庭での楽しみがある人。また、昔に苦労を経験して成功した人なのだろう。
矮小な身でありながら、偉そうにそんなことを考える。
ただ、人間という生き物の強欲はかわいいものではない。
昨日までの自分は幸せをひたすら貪り続け、そのうえ「癒し」も求めていたのだから。
高校生の自分にとっての「癒し」とはいったい何なのだろうとそのとき思った。
夜中と言うのか朝というのか、A.M.三時。自分はユーチューブを起動した。
どんな動画を見ても、何か物足りないし、何かがつまらない。ユーチューバーの皆さんの動画はいつも見れば面白いのに、そのときの自分にはなぜか、面白いと感じられなかった。
そんなこんなで、二時間ぐらい視聴者という語感よりは傍観者という言葉が似合う態度で動画を視聴した。
しばらくして、一つの動画に辿り着いた。
Pが頭文字の地下アイドルグループの皆さんが作られている動画だった。
結果として、彼女らの動画が僕にとって「癒し」、いや、それ以上のものを与えてくれることとなった。
地下アイドルには偏見があった。プロデューサーと……とか諸々。昔に、今地下アイドルをやってる奴にストーカーされた過去があるため、蔑視していたのかもしれない。
ただ、何か……何かが気になってこの人たちを見ていた。
そして、見て行くうちに過去に自分が言った言葉を思い出した。
「他人をバカにする人より、自分の夢を追い続けて自分を磨こうとする地下アイドルの人達は輝いて見える。俺らの周囲の奴はクソみたいなゴミクズばかりだ」
これは、自分と同じ学年の生徒に地下アイドルがいると広まり、その人をバカにしたような発言をする周囲に対して向けた言葉だ。
決して自分をカッコよく魅せようとしたわけではない。周りに真っ向から言ったわけではなく、親しい人と話しているときにぽろっと口から出ただけの言葉だ。
それを思い出し、自分をひたすら磨く人間はやっぱり……とはならなくて、前と違って言葉にできないような敬う……? 羨む……? わけがわからなかった。
いや、自分の本心が言葉にできないわけではない。だが、それを言語化してしまうと、自分が抱いている想いと齟齬が生じるのではないかと不安になってしまう。だから、あえて言語化はしないべきなのだろう。
ただただ、自分は彼女らの動画を見て圧倒されてしまった。世界が違く見えた。
なかでも、自分が目を離さなかった人物がいた。彼女はもちろんかわいかった。だが、そういうことではない。何かが違ったのだ。輝きが人の何倍にも見えた。
名前を出しても問題はないのかもしれないが、矮小な自分にはネットで、一応は無名のカクヨムライターとして、彼女の名前を出すことは叶わない。だけど、興味を持って調べてくれるのなら皆さんに是非彼女を見つけて欲しい。そのため、イニシャルだけは書かせて欲しい。苗字がK、名前がMだ。どうか見つけて欲しい。自分のこと駄作な文を理解してくれる方がいたならば、彼女の輝きが一目でわかるはずだ。
いずれは、自分も彼女と同じほどの輝きを放てる人間になりたいと思う。自分の頑張りが世間に認められ、自分で認め、彼女にも認めてもらえるようになりたいと心から思う。
夢を追ってる彼女にいつか自分の口で感謝を伝えたい。あなたのおかげで昨日とは違う自分を生きているのだから。
彼女は天然でおバカキャラのような存在だ。ちっちゃくて、女の子らしくて、だけど部屋は超汚い。そんなアイドルだった。
言い忘れていたが、アイドルであった。自分はアーカイブに残された過去の動画を見ただけで、彼女はだいぶ前にアイドルを卒業していた。ただ、すぐに彼女のことが気になり、調べ、最近ユーチューブを始めたということも知った。
もちろん、彼女がアップロードした全部の動画を視聴した。本数があまりないため可能だったのは内緒の話。
彼女は以前の動画より垢抜けていて、綺麗になっていて、だが変わらないところもあって、自分には光そのものにしか見えなかった。
そして、ただの興味で、しかし複雑な心境で彼女の過去を調べた自分は涙を流した。
ネットの情報が嘘か本当か、そんなのはどうでもよかった。
あんなに輝く彼女の幼少期は、壮絶なものだったと知った。窓の代わりにビニール袋……、頼ることをしないかできずか、おそらく後者なのだが、大人に言われるがままに借金……。
あんなに輝く彼女が……。
そう思ったときにようやく気づいたよ。
そんな過程があっても、諦めずに夢を追い続けた彼女だからあそこまで光れるのだろうと。
どんなときも良いアイドルになろうと諦めず頑張った彼女だから輝くのだと。
ときには、かわいくなりたい一心で心に刻んだことが、諸刃の刃となって彼女を襲い、悩ませ続けたこともあったらしい。
彼女の現在のユーチューブは、その自身に刺さった抜けかけの刃を綺麗に抜いて、傷口を塞ぐためのもの、みたいな比喩が一番わかりやすいかな。
彼女自身も自分のための動画だと言っていた。
あぁ、やはり輝いている。
彼女の過去を知ったとき、輝きの理由を知ってそのネットの情報を事実だと確信した。
いや、もしも仮に虚偽だったとしてもよいのだ。
自分は今の彼女の素晴らしさを理解したし、これから先も応援し続けることにした。今も夢を追う彼女を。
その彼女から大切なものを教わった。その大切なものは己に刻んで明言はしない。ただ、もしここまで読んでくれていた方ならわかることだろう。僕自身は、これだけは忘れてはいけない、書かなくては覚えられないのだったらそれでは意味がないということを深く、深く胸に切り刻み込んで染み込ませて生きていく。
いつか彼女に直接お礼を言うのが、新しくできた自分の夢だ。
不幸なことがあっても、それを乗り越えようとする頑張る彼女の幸せを、自分は赤の他人として、彼女には認識されていないとしても願う。
彼女がもっともっと幸せになれますように。
本当に、僕を変えてくれてありがとう。
届かないと知っていながら、いつか届けたいと夢を願いながら今日はこれを書いて眠りにつく。
本当に、本当にありがとう。
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