第六章 遠山美奈子

 二〇一〇年

 佐治ケ江優 十六歳



     1

「あれ、佐治ケ江さん?」


 校内の渡り廊下を俯き気味に歩いていたゆうは、自分の名を呼ぶ声に顔を上げ、その瞬間に背筋が絶対零度にまで凍り付いていた。


 このようになる可能性など、充分に考えて、日々覚悟していたはずだというのに。


「この学校じゃったん? ていうかこっち戻ってきとったん? じゃったらなんで教えてくれんかったんよ。うちらの仲じゃというのに水臭いわあ」


 五人の女子生徒が他の生徒の迷惑も考えずに横一直線で歩いており、その真ん中にいる背の高い女子が優へと声をかけてきたのである。

 それは優のよく知った顔であった。


 中学一年二年と同じクラスだった、ばりだ。

 要するに、優をいじめていた一人だ。


 優をいじめから守ろうという演技をしていたあのとうどうのぶと比較的仲が良かったため、いつも目立たないところでいじめをしてくることが多かった。


 なお横並びの他四人のうち二人は知らない顔で、残る二人は現在優と同じクラスのでらこずえやまだ。

 小野寺梢と山田葉菜、どちらもいわゆる不良といった雰囲気を隠しもせずおおっぴらに漂わせているような生徒である。


「またこっちで、楽しい学校生活が送れるとええねえ。中学の時みたいにねえ。ほいじゃあ」


 小針志穂は、にやりと笑った。

 彼女ら五人は、横並びを一切崩すことなくまた歩き出した。


 渡り廊下の幅目一杯に広がっているものだから、優は避けようとして廊下から足を踏み外して、昨日の大雨によるぬかるみの中に片足を深く突っ込んでびちびちと泥をはねてスカートを汚してしまった。

 優はその態勢のまま、楽しげに会話をしながら去っていく彼女らの後ろ姿をじいっと見つめていた。


「なんね志穂ぉ、知り合いじゃったんだ。うちらのクラスに転校してきた佐治ケ江さんと」

「ほうよ。仲良しじゃったけえ」

「暗いよね、あの子」

「ほじゃけえ、よくいじめとったもん」

「なんなん? どこが仲良しなんよ」

「どんなことしとったん?」


 彼女らは新校舎へ入る扉手前のところで立ち止まって、小針志穂を中心として会話を続けた。

 距離があるというのに、一体どれだけの大声で話しているのか、優のいるところまで内容がはっきりと聞こえてきた。

 小針志穂は、優が中学時代にどのようないじめを受けていたのかを、楽しそうに語っていたのである。

 クラスのみんなで優を失禁に追い込んだ話など、一同大爆笑であった。


「きったねえ。あの子、そんな子なんじゃあ」


 山田葉菜の、わざとらしいまでの高笑い。


 わざと、あんな大きな声で話しているんだ。

 わたしに聞かせるために。


 優はきゅっと口を結ぶと、踵を返して歩き出した。

 ぎゃははは、という彼女らのけたたましい大声が聞こえてきた。


     2

 翌日から、教室での雰囲気というか生活というかが、ゆうにとってがらりと変わった。


 でらこずえやまが、教室内で新たないじめのターゲットを見つけたからである。

 ゆうという名の、新たな獲物を。


 優にとって意地悪をされるという経験は懐かしくもあるがつい最近のことのようでもあり、そして既に覚悟を決めていたということもあり、またあの日々が始まったのだという実感を取り戻すのにさして時間はかからなかった。さしてというよりも、一瞬で切り替えることが出来ていた。


 以前に母たちから聞いたことを思い出していた。「いじめを受けるようになること自体は運。でも一度受けてしまったならば、そこにいる限りいじめがいじめを呼ぶ」という持論を。

 まさしくその通りであったこと、優は身をもって経験することとなった。


 広島に戻ってきてからこれまでの数ヶ月を、平穏無事に過ごすことが出来ていたというのに、過去の優を知る者とばったり再会した途端に、またいじめが発生したからである。

 いじめられっ子だと知るとさっそくいじめたくなるような人種が、どこにでもいるということだ。


 こうした生徒同士によるいじめ問題は、部外者の生徒からすれば実にスリルのある刺激になるようで、数名を除くほとんどの者が見て見ぬふりをして興味津々に様子をうかがっていた。


 残る数名はどうしたかというと、そのいじめに加担したのである。


 加担はさすがにやめて欲しいが、傍観は仕方のないことと優は諦めている。

 今回は中学の頃のようにクラス全員が敵というわけではないので、まだましといえた。


 前向きとはいえないものの、他人事のように冷静に考えられるようになったのは、心の中にはいつもやまゆうたち佐原南高校の仲間がおり、彼女らとの思い出に勇気をもらえていたからかも知れない。

 そうではない現在の自分との比較など出来るはずもなく、正確なところは分かるはずもなかったが。


 とにかく優は、いじめに屈することなく真面目に高校へ通い続けたのであるが、そんなある日のことであった。


     3

「ない! うちの財布がない!」


 小野寺梢の狂乱したような大声が、騒がしかった教室を一瞬にして静まらせた。


「コズ、もっとよう探してみなよ。なんか心当たりは?」


 山田葉菜は小野寺梢のバッグを勝手に開いて、ガサゴソと探り始めた。


「じゃけえ心当たりいわれても……よう分からんけえ。一時限目の後の休み時間には、ちゃんとあったんじゃけど。……ああ、ほうじゃ! 佐治ケ江さん、確か社会の資料を受け取りに職員室の門倉先生んとこ行って、授業に遅れてきよったよねえ」


 小野寺志穂は、佐治ケ江優の席の前に立った。

 二時限目はリスニングルームへ移動しての英語の授業を行なったのであるが、確かに優は三時限目に社会科で使う資料を教室に運ぶために職員室へ行っており、授業には少し遅れてきた。

 だからって、どうして財布など盗まなければならないのか。


「あ、あの、確かに、授業に、遅れはしたけど……ほじゃけえ……」


 自席でおとなしく予習をしていた優は、盗難騒ぎの矛先が突然自分に向いたことにすっかり焦ってしまい、心臓の鼓動は速くなり、手も指先まで震えてしまってた。口の中が乾いて唾で張り付いており、ただでさえ喋ることが苦手なのに普段以上に言葉が出てこなかった。


「なにしどろもどろになっとるん? 疑うとるわけじゃないけど、ちょっと机の中を見させてくれん?」


 小野寺梢は優の許可も得ず、机の中へと一気に奥まで手を突っ込んだ。


「なんか財布っぽいもんがある!」


 手を引き抜くと、確かに小野寺梢の手には財布が握られていた。


「うちの財布じゃ!」


 クラスのみんなに見えるように、財布を高々と掲げた。


「説明してくれん? これがなんで佐治ケ江さんの机にあるん? 納得いくように、説明してくれん?」


 小野寺志穂は、口調こそおとなしいが表情は険しく優を睨みつけていた。


「あくまで状況から考えるとじゃけどお、佐治ケ江さんが盗んだとしか思えんよねえ」


 山田葉菜が、意地悪そうな笑みを浮かべた。


「うち、そんなこと……しとらん」


 優は胸を押さえながら、なんとか弁解の言葉を吐き出した。


「いやいやいや、盗んだもんがやっとらんって主張するんは当然じゃろ。でも状況からして、佐治ケ江さんがコズの財布を盗ったことにならん? って、そういうとるんよ。だって現実として、ここに入っとったんじゃから。そう疑われるのは、当然と思わん?」

「でも……」

「でもじゃのうて。はっきりいいや。ちょっと遅れて誰もいない教室に戻ってきて、その時に財布を盗ったんじゃろ? お金がなかったから? 最近ちょっとうちらが冷たく当たっとるから? どっち?」


 無茶な理論だ。盗品騒ぎがあるたびに、一番最後に教室にいた者が犯人になるのか。

 それに……


「ほじゃけえ、うちはあの時間……」


 優は弁明の言葉を吐こうとした。

 だが、二人に間近で睨まれて、すっかりすくんでしまって言葉を続けることが出来なかった。

 ただ涙目になって震えるばかりであった。


「いい返すことが出来んってことは、ほいじゃあやっぱり佐治ケ江さんがうちの財布盗ったってこと? 信じたくないけど、じゃけえハナのいっとる通り状況が状況じゃろ」


 小野寺梢は、再び優を睨みつけた。


「どうなん? 謝れば今回は先生にいわんでおくけえ」

「じゃけえ……うちは……」


 優はうつむき、口ごもっていた。

 これまでいつも、いじめに対しては過ぎるのをじっと耐えるだけだった。

 今回のように、

 なにをいい返すこともなく、

 ただ、過ぎ去るのを。


 面と向かって逆らうような真似など、ほとんどしたことなどがない。

 つまり、戦うことへの慣れがない。


 再びいじめられることもあるかも知れない、そう覚悟は固めて広島に戻ってきた優であるが、だからといって実際にいじめられて、胸の痛みや苦しさが楽になるはずもなかった。


 呼吸が荒くなっていた。

 頭の中が真っ白になって、視界がただぐるぐると回っていた。


 頭の中にほんの少しだけ残っている冷静な自分も、この状況にはただ泣き出したいだけであった。

 なんで自分はこうも弱いのかと。


 千葉で、佐原南高校での日々で、自分は変わったと思っていた。

 でもそれは違っていたんだ。

 ただ、強くなった振りをしていただけだったんだ。

 自分に自信を持てたという、振りをしていただけだったんだ。

 でもこれが現実だ。

 なにも、出来ないではないか。

 こんな理不尽なことをされているというのに、ただ恐怖に震えているだけではないか。

 自分は、最低なままなんだ。

 変わってなんかいないんだ。


 いや……

 そうではない……


 ふと、脳裏に山野裕子の顔が浮かんでいた。

 フットサルでの合宿や、試合での激闘を思い出していた。


 そうだ……

 確かに一人では、自分は弱い存在かも知れない。

 強くなった、などと思うこと自体おこがましいことかも知れない。


 でも、自分は一人ではない。

 仲間がいる。


 仲間と作ってきた、思い出の積み重ねがある。


 たとえここにはいなくとも、たとえここには自分一人であろうとも、そんなことは関係ない。

 そう、自分は一人ではないんだ。

 優はすーっと深く呼吸をすると、顔を上げ、すっと席を立った。


「うち……」


 小野寺志穂の顔を見つめた。


「なんよ?」

「確かに職員室へ行ったけど、かどくら先生が資料は次の休み時間まで待ってくれいうて、受けとっとらんけえ」


 小野寺志穂と山田葉菜の二人は、ちょっとたじろいだような表情を作った。ほんの一瞬であったが。


「じゃけえ、リスニングルームに遅れてきたことには変わりないけえの。どう説明するん? 一度教室に戻ったことにも変わりないけえ。どう説明するん? 盗ってないことをどう証明するん?」

「職員室ではやし先生に声を掛けられて、ずっと進路の話をしとった。それにうち、最初から英語の教科書を持って出たから、教室には戻っとらん。リスニングルームへは直接行った」


 優のかつてなかったようなきっぱりとした態度に、小野寺志穂は顔に狼狽の二文字を浮かべ、それを周囲に悟られまいと慌てたように口を開いた。


「証拠は? 教室に戻ってないって証拠は? なに苦しいいいわけしとんの! 盗ったこと認めれば先生にはいわんいうとるのに、人の優しさをなんじゃ思うとるん」

「林先生は、リスニングルームの隣にある物理室に用事があったから、そこまで進路のことを話しながら一緒に歩いとった。ほじゃけえ、うちがリスニングルームに入るところも見ていた。嘘かどうかは、聞いてくれば分かることじゃろ」

「それ本当じゃったら、一時限目の後の休み時間に佐治ケ江が教室に行くのは不可能じゃなあ」


 ぐちろうが、腕組みをしながら呟いた。


「探偵かてめえ! 野口、お前なに適当なこというとるんよ。佐治ケ江が、こいつが、犯人に決まっとるじゃろ! うちらがちょっと虫のいどころが悪くていじめてしまっていたもんじゃから、それを根に持って盗んだんよ」

「うちは、やっとらん」


 優は、視線真っ直ぐにきっぱりと否定した。


「ほうじゃ、資料は次の休み時間まで待ってくれいわれたんじゃろ。じゃあ、次の休み時間に盗ったんじゃ。ほうじゃ」

「次の授業は教室じゃから、みんな教室に残っとったけど、そこでうちがいつ盗めるん?」


 優は、小野寺梢と山田葉菜の完全に破綻した理論を冷静に突いた。


「うちからもいいたいことあるんじゃけど、小野寺さん、うちの机に腕を入れた時、迷わず真ん中から手を入れて、探りながらじゃなく、いきなり一番奥に手を持っていったけど、どこに財布があるのか知っているように思えた」

「偶然じゃ! 犯人のくせに、なにいうとるん! 泥棒! 泥棒!」


 小野寺梢は、声を裏返して叫んだ。


「この前小野寺さんたちが一緒に渡り廊下を歩いとったばりさん、うちがまだ千葉へ転校する前、中二の春に、別の子にじゃけどまったく同じことしとったけえ」


 小野寺梢と山田葉菜のまぶたが、二人でピクピクと痙攣していた。


「コバから陥れるやり口を聞いて、それを実行した、そう、思っとるん? うちらが、あんたを陥れるために、勝手に自分の財布を入れただけ、そう、いっとるん?」


 まぶただけではない。小野寺梢の手も、唇も、全身までがぶるぶるぶるぶると激しく震えていた。

 転入早々からずっと、暗くて下を向いてばかりの、まともに自己主張も出来ないような佐治ケ江優が、なんと逆らってきているのだから、それは屈辱以外のなにものでもなかっただろう。


「うちらに逆らって、ただですむと思うなよ。これからどんな目にあっても、知らないからね!」


 小野寺志穂は、優を憤怒の形相で睨みつけた。


「こんなことをしていて楽しいのなら、恥ずかしくないのなら、いくらでもすればいい」


 優はその視線を目をそらすことなく受け止めて、きっぱりといい切った。


「アホくさ。やっとられんわ」


 小野寺志穂と山田葉菜は嵐を起こすだけ起こすと、はぐらかすような態度で教室から出て行ってしまった。


 停止していた時が動き出したかのように教室にどっと喧騒が戻ったが、佐治ケ江優だけは相変わらず自席に突っ立ったまま、呆然と正面を見つめていた。

 その身体は、震えていた。


 特に脚が、遠目からでもそうと分かるくらいにブルブルと震えていた。

 ゆっくりと右手を持ち上げると、そっと左胸をおさえた。


 なんだか、苦しい。

 息がつまりそう。

 でも、それは不快な感覚だけではなかった。


 まだ身体の中には、小野寺志穂たちにもたらされた不安や恐怖が破裂しそうなくらいにたっぷりと詰まっていたが、しかしそれとは別に、ある種の高揚感、満足感がどんどん身体の内部から膨れ上がってきていた。なんだか名状しがたい熱いものが、込み上げてきていた。


 この気持ちの正体は分からない。

 でも、なにがこの気持ちを自分にもたしているか、それは分かっていた。


 戦えた。


 それが、すべてであった。

 でも、一人で戦ったんじゃない。

 お父さん、お母さん、佐原南のみんながいてくれたから、だから、わたしは戦えた。


 ぶるぶると、いまにも崩れそうなくらいに全身を震わせながら、優は腰を下ろそうとした。お尻を乗せ損なって、前に倒れようとする椅子に膝裏を押され、がくり後ろへ転びそうになったが、机にしがみついてなんとか体勢を持ち直すと、ゆっくりと座り直した。


 長いため息をついた。

 恥ずかしさをごまかすためのものなのか、ようやく一安心ということなのか、漏れるため息の理由は自分でもまるで理解していなかった。


「あ、ああ、あのっ、佐治ケ江さんっ」


 優の机の前に、一人の女子生徒が立っていた。

 ひさもと。眼鏡に天然パーマ、クラスで一番背が低くその身はガリガリで、指で押せば倒れそうな生徒である。

 彼女は優へとぐっと身を乗り出すと、こそりと耳打ちした。


「ごめんなさい。それと、ありがとう、なんかすっとした」


 それだけいうと、久本真理江は自席に戻った。

 なにがなんなのか。

 優はあっけにとられ、いつまでもぽけーっとした表情を浮かべていた。


     4

 後から知ったことなのだが、久本真理江も二年生の春から、つまり優が転校してくるよりも前に、小野寺志穂たちにいじめを受けていたのである。


 優が新たな標的となったことで、久本真理江はいじめから解放された。


 彼女は、また自分に標的が戻ることへの不安や恐怖に、優へのいじめを傍観していたことが心苦しかった。それを謝ったとともに、いじめを見事撃破した優に対して礼を述べたというわけである。


 この財布盗難疑惑を撃破した一件後、久本真理江はやたら優に付きまとうようになり、一緒に行動することが増え、結果、小野寺梢たちはなかなか優へと手を出すことが出来なくなっていった。


 教室で顔が合えば睨みつけるという程度が関の山であったが、やがてそれすらもぱったりと収まることになる。


 優と、ある女子生徒との出会いによって。


     5

「ね、さんっていうんじゃよね? 佐治ケ江さんってさあ、フットサルやってんじゃよね」


 もうすぐ高校二年の三学期も終ろうかという、ある日のことであった。

 初めて見る顔の女子生徒に、廊下で肩を叩かれこのような馴れ馴れしい声を掛けられたのは。


「ほうじゃけど……」


 優は頷きながらも、ちょっといぶかしげな表情を作った。


 怪しい人物と思ったからではない。

 初めて会ったような気がしなかったのである。


 自分に覚えがないだけで、実はどこかで接点があるのだろうか。

 いや、どう考えても接点などない。

 中学の時にも、このような同級生はいなかった。間違いない。


 でも、どこかで見たことのある顔だ。

 ということはやはり、どこかで接点が?


 分からない。思い出せない。

 そもそも、なんで自分なんかに話し掛けてくる?


「この高校、フットサル部なんかないじゃろ。どこで練習しとるの?」


 優の疑問符だらけの表情や態度などまるで素知らぬ顔で、女子生徒は自分の疑問だけを投げ続けた。


「あ、えと、学校から、帰った後、家の庭か、公園で、一人で」

「勿体ないなあ。うち、はら駅前にあるスポーツクラブでやっとるんじゃけど、迷惑じゃなかったら来てみん? 見学だけでもええから。あ、うちなんか怪しい奴になっとる? 種明かしするけえ。うちの名前はとおやま。佐治ケ江さんの隣のクラスじゃけえね。うち、クラブでは月謝免除でやらせてもろうとるんじゃけど、その分というかなんというか会員を勧誘せえってうるさいんよ。親でも兄弟でもいいから、勧めといてよ。じゃけえ、いま話し掛けたんは勧誘じゃのうて、単にフットサルなんかやっとる子が珍しいから、どんなんじゃろか思うてね。ほいじゃあ、またね」


 遠山美奈子と名乗った女子生徒は、自分の聞きたいことだけ聞き喋りたいことだけ喋ると、廊下を小走りに自分の教室へと消えた。

 過ぎ去った嵐に、佐治ケ江優は突っ立ったままぽかんとした表情であった。


「優ちゃん、ひょっとしていまの子知らんの?」


 一緒にいたひさもとが、優の顔に浮いた「誰?」という疑問符に気が付き尋ねた。


「うん、どこかで会うた気もするんじゃけど」

「フットサル女子代表じゃけえね」

「あ……」


 確かに、雑誌で顔を見たことがある。

 中国地方ローカルのテレビ番組でも。校舎や制服が似ているなと思っていたけど、この高校だったのか。


「その番組、ドキュメンタリーじゃろ。優ちゃんが転校してくる少し前に撮影があったんじゃけど、度々そんなことがあるけえ、あの子この高校で一番の有名人じゃね。一番というか唯一」

「ほうなんじゃ」


 フットサル代表だなんて凄いな。

 でも人は人、自分は自分。あまり興味はない。


 と、遠山美奈子の素性が知れた後も、優はさして彼女のことを気にとめなかった。

 スポーツクラブへも、行くつもりはなかった。

 学校の部活であれば入りたいところけど、わざわざ駅近くまで通うのも面倒だから。


 優としてはそのような気持ちであったのだが、遠山美奈子の方は優にかなり興味を持ったようで、暇さえあれば隣の教室から会いに来てはフットサルの話を振ってくるようになった。


 遠山美奈子曰く、

 最初は学校にフットサルについてまともに話せる者が一人もいなかったため、経験者らしい優に話し掛けてみたのであるが、その後ネットで佐治ケ江優について検索してみたところ、とてつもなく技術力が高い、関東では知らない者のいない有名な選手であるらしいということを知って、より積極的にアプローチを仕掛けてくるようになったということであった。


 テレビに出演したこともある知名度抜群の女子高生アスリートと仲良しになったことにより(この時点で、優はまだ別に仲良しとは思っていなかったが)、いつしか小野寺梢たちからのいじめは完全に終息していた。


 やがて優は、遠山美奈子の通うスポーツクラブに入会することになった。


 勧誘に根負けしたからではない。

 遠山美奈子の語り口の面白さに、佐原南高校にいた頃のようにチームに参加して試合をしてみたいという気持ちを呼び起こされたからであった。


 一週間の体験加入の後に月会費を払って本会員になるかを決定する予定であったが、優は会費免除で会員になることが出来た。

 遠山美奈子に勝るとも劣らない素晴らしい才能を認められたためである。


 こうして佐治ケ江優は、火水金の放課後、そして土日は昼から、遠山美奈子と一緒に三原駅前にあるスポーツクラブに通うこととなったのである。


     6

ゆう!」


 とおやまは、マークを振り切って走り出した。


 仮にその声がかからなかったとしても、優はまったく同じようにパスを出していただろう。

 このコースこのタイミングしかない、という絶妙なパスが遠山美奈子へと通った。


 遠山美奈子はゴレイロと一対一になると、至近距離から思い切り右足を振り抜いた。

 ゴレイロのやなぎもとかおりは、腰を軽く落として全身を使ってシュートをブロックしたが、こぼれたところをおおつかが詰め寄り押し込んだ。


「よし同点!」


 遠山美奈子は叫んだ。


「ああ悔しい、もう!」


 バランスを崩して尻餅をついている柳本香は、どんと拳で床を叩くと立ち上がった。


 ナミオスポーツクラブにある屋内フットサルコートで、練習試合をしているところである。


 開始早々にミスから主力組が失点してしまったのだが、いま大塚小百合のゴールで追い付いたところだ。


 佐治ケ江優が入会してからまだ一ヶ月も経っていないが、既に主力組としてチームに噛み合って、攻守において大活躍であった。

 その能力の高さから会費免除されているわけで、そうでなければクラブとしても困るだろうが。


 単に月会費がかからないというだけで、その他諸費用のかかることなどは通常会員と変わらない。しかしほとんどの者が会費を払っているわけであり、つまり会費免除とはアマチュア界での一種のプロ契約のようなものであろうか。


 このクラブでは、現役代表もしくは代表に呼ばれてもおかしくないような者だけが会費免除されている。

 具体的には三人おり、遠山美奈子、佐治ケ江優、ゴレイロの柳本香だ。


 そのかわり、リーグ戦ではスポーツクラブの広告塔として活躍することを期待されることになる。


 契約は一年間で、その期間中は他のクラブへの移籍は出来ない。

 学校の部活への参加は別であるが、フットサル部がない高校へ通う優と遠山美奈子には関係のない話である。


 ナミオスポーツクラブは中国女子フットサルリーグに加盟しており、当然優たちも選手として参戦した。

 遠山美奈子と佐治ケ江優の連係による破壊力は抜群であり、大量得点による勝利が多かったが、優秀なフィクソがいないことから失点も多く、二○一一年度のリーグ戦は準優勝に終わった。


     7

 月日は流れ、ゆうたちは高校を卒業した。


 とおやまは地元の小さな企業に就職し、フットサルは変わらずナミオスポーツクラブに所属して、続けた。


 優は大学へと進学した。

 元々、学校にフットサル部があるのならばそちらへ参加するつもりでいたので、スポーツクラブは惜しまれながらも退会した。


 それぞれ別の道を歩み出した二人であるが、フットサルという接点を通して関係は続いた。

 たまに会って一緒にボールを蹴ったりするほか、フットサル以外のことも話し合えるような、そんな仲になっていた。


 優には、遠く離れた場所に山野裕子という親友を持っているが、この生まれ故郷の広島でも初めて親友を作ったのである。


 小中学生の優しか知らない者が見たら、さぞかし驚いたことであろう。


     8

 がわ女子大学。


 ゆうの入った大学である。

 入学してすぐにフットサル部に入ったのであるが、そこで優はちょっとした悩みというか、諦めにも似た感情に襲われていた。


 ここまでくると、もう運命というよりはきっと自分の性格や態度が引き起こす必然的な現象なのだろう。


 ならどうすればいいのかなど分からないけど、でも運命のせいにするよりも自分のなにかが呼んでしまう必然と思った方がある意味で遥かに楽だ。


 なんの話かというと、優はこの大学でもまた、新入部員いじめの対象者筆頭であったのである。


 無口で表情もあまり変わらず、故に覇気がないと思われるのは本人も自覚している。

 確かに、人から突っつかれやすいところはあるのだろう。

 東京の先輩から、大学の部活は高校よりも遥かに理不尽だという梨乃本人の武勇伝をたくさん聞いていたので、それほど驚くことはなかったが。


 驚きはしなかったが、そんな理不尽ないじめがいつまでも続いていたら、さすがに精神疲労でどうなってしまったか分からない。


 しかし、優へのいじめはそれほど長くは続かなかった。


 ボール拾いばかりやらされていた優であるが、ある日、練習試合への出場を命じられた。

 筋肉のまるでない貧弱な容姿に、先輩たちが自らの優越感を誇示してやろうとしたものであったが、その試合で優は、常人離れどころか神の領域といっても過言でない凄まじい技術力を見せて周囲の度肝を抜いた。

 それからは先輩たちの態度が百八十度変わり、優は「じよの宝」などと呼ばれ、あっという間に主力になり、先輩から特別待遇を受けるような存在になってしまったのである。


 とはいえ優は一切驕りたかぶることなく、相変わらず他の一年生たちと一緒にボール拾いなども続けていた。


 練習試合で優を中心とする連係を深めていく中、リーグ戦の開幕が近づいてきた。


 瀬野川女子は弱小校であるが、佐治ケ江優がいてくれればそれなりに良い順位を目指せるのではないか。部員も監督もそう信じ、今年こそ定位置脱出してやろうと開幕を楽しみにしていたが、開幕直前の対外練習試合で優は悪質なファールを受けて足を負傷し、長期離脱を余儀なくされることとなった。


 過ぎたことは変えられない。

 戦線離脱中に、優は筋トレに励んだ。


 もともと筋肉の付き難い体質であるが、だからこそこの期間を利用して精一杯頑張れば、人並みとまでいかずとも、ある程度は付けられるのではないかと思ったのだ。


 筋トレのために、以前所属していたナミオスポーツクラブへ通った。

 筋トレを真剣に打ち込むということは、筋肉の回復期間を多く取るということであり、暇な時間が増えるということでもある。

 優はその間、頭を働かせて、フットサル部がより強くなるためにパソコンを利用しての、いわゆるITフットサルの下地作りに取り組んだ。

 主将に提案しただけなのだが、任されて担当にされてしまったためだ。


 提携男子大学の工学部に、タブレット用アプリのプログラム開発を依頼したりなど多忙な日々を送ることになった。

 戦術シミュレーター開発の流れから、実際の試合での戦術指導も行なうようになった。


 それでも最初は負け続きであったが、優が戦列復帰してから破竹の七連勝で中国大学フットサルリーグ女子の部にて優勝。


 瀬野川女子大学は、創部初となる新日本大学フットサル大会への出場切符を手に入れたのである。


 だが、リーグ優勝を決めたその日の夜。

 優は、自分の運命を揺り動かす衝撃的な事件の連絡を受けたのだった。


     7

 ゆうは灰をつまみ、香炉の上に落とした。


 左手には数珠を持っている。

 全身黒の、スカート姿だ。


 場内にはお経の声が響き、線香の煙が漂っている。


 ここは三原会館。

 お通夜を執り行っている最中である。


 周囲には故人の親族に職場関係者、友人、フットサル協会の者。

 優は位牌を前に、目を閉じ、そっと手を合わせた。


 ふう、と小さく息をはいた。

 身体が震えていた。


 彼女との思い出が、脳裏に浮かび上がっていた。

 短かったけれども、自分の小さな身体にはしまいこめずに溢れてしまいそうなくらい膨大な、濃密な、そんな記憶の数々が。


 つい先日に会ったばかりだというのに。

 何故、こんなことになってしまったのか。


 彼女とのことを思い出しながら、優は涙にその目を潤ませていた。


     8

「ほうか、優勝かあ。凄いなあ。おめでとう。ああ、ほうじゃあ、優にこれ渡しとくんじゃったわ。優勝争いしてるって聞いていたのに、忘れとったわ」


 とおやまは残念そうな表情を作ると、練習や試合の時に髪をまとめているヘアバンドを、自らの頭からするりと抜き取った。


「ただのヘアバンドじゃろ?」


 優は尋ねた。


「ほうじゃ、ただのヘアバンドじゃ。……うちなあ、身不相応にもフル代表に選ばれたりとかして、調子に乗っとるとかデカイ面しとるとかいわれ放題なんじゃけどな、人生で一度も優勝いうんを経験したことがないけえね。それがコンプレックスというより、単に羨ましくてね、優勝を経験したことのある人間が。うちも優勝を経験した上で、調子に乗ってデカイ面アしたいわあ。じゃから、うちの物を優が身に付けて優勝してくれれば、それ付ければうちにも運が向くんじゃないかと思うて。ああっ、ほうじゃほうじゃ、地域リーグ優勝ってことで今度全国大会に出るんじゃろ? じゃったら、これ付けて試合に出てもらえん? な、お願いじゃから。ええじゃろ」


 そういうと遠山美奈子は無邪気に笑った。


 それが、一昨日のことであった。


     9

 彼女は決して、運を分けて貰いたかったのではない。

 むしろ、逆だ。


 優の気弱な性格をよく知る彼女は、全国大会という大舞台に立つことになる優を励ましたかったのだ。多大なる緊張、プレッシャーと戦うことになる優を。

 「うちも一緒にいるよ」と。


 そんなこと恥ずかしくてとてもいえず、だからあんな嘘をついてヘアバンドなどを渡してきたのだ。

 優は、そう信じている。


 でも結果、遠山美奈子は優から運をもらうどころか、反対に自分の運をすべてあのヘアバンドの中に込めてしまったのだ。

 そうでもなければ、あんなことになるはずがない。


 まだ十八だというのに。

 交通事故で、あんな無残な最期を遂げることになるなど。


 遠山美奈子はフットサルの練習に向かう途中に、酔っ払い運転の自動車に後ろから猛スピードで追突されたのだ。


 酔っ払いは軽症で済み、遠山美奈子は即死であったらしい。


 犯人をどれだけ恨んでも恨みたりないが、なにがどうであれ優にはどうすることも出来ず、ただ親友の冥福を祈ることしか出来なかった。


 優は位牌そして周囲に礼をすると、俯き加減のままホールへと出た。


 小さく鼻をすすった。

 こぼれる涙をこらえようと天井を見上げたが、こらえ切れず、つうと涙がこぼれた。


 その涙に誘発されてか、いつしか優は嗚咽の声を漏らしていた。

 お経の声の響く中、いつまでも泣き続けていた。


     10

 中二の時に味わったのは、消失感ではなく単に信じていた者に裏切られたという絶望感であった。

 でも、自分の性格がひねくれていたのか、それとも本能的な直感で見抜いていたということなのか、どこかとうどうのぶという人間を信用していなかった部分も僅かながらあり、だから現在になって過去を振り返ってみると、それほどの絶望ではなかったような気もする。


 などと考えてしまうのは、過去の苦しみを徐々に忘れかけているからというよりは、本当の消失感というものを経験することになったからであろうか。

 大親友の事故死という、心にぽっかりと穴のあく経験を。


 彼女とは、それほど付き合いが長かったわけではない。それでも同じレベルでフットサルを語れる者同士、過ごした日々は優にとっては何十年分にも匹敵する濃密なものであった。


 もしもやまゆうを失うようなことがあれば、やはり同じような気持ちになるであろうか。


 遺された者として頑張らねばという気持ちと、なにをする気も起こらない空虚感、その狭間でただ立ち尽くすことになるのだろうか。


 なるのであろう。

 かつて大嫌いだと身勝手に敬遠してしまっていたその絶対値の分だけ、裕子には友情を感じている。かけがえのない、親友だ。


 幸いにして裕子はそう簡単に病気にならないどころか車に撥ねられても自動車の方が無事かと思うくらいに頑丈で、だから現在のところそのような心配は無用であろうとは思うが、先のことなど誰にも分からないし、現実としてあのような悲惨な事故が身の回りで起きてしまった以上は、考えるなといわれても考えてしまう。


 考えてみたところで不安感は深まるばかり。

 なんだか裕子の声を聞きたくて仕方のない気持ちになったが、電話で話しをしようものならますます現在の混沌とした気持ちが激しくなって泣き出してしまいそうだった。


 そんな優の導き出した結論は、ならばむらの声でも聞こうということであった。


 別に支離滅裂な理論ではない。

 優は友人の死によって、周囲の人間が消えてしまうことに不安感を覚えた。誰かのぬくもりを感じたいが、不安感の筆頭として浮かぶのが一番の親友である裕子であり、だから彼女とは話しにくい。

 だから大事な人ランキングで次点の梨乃を選んだ、ただそれだけのことだ。当人にとっては、失礼極まりないだろうが。


 特に話したいことがあるわけではない。

 ちょっと声を聞きたいだけだ。

 自分は一人じゃないということを、再確認したいだけだ。


 梨乃先輩には迷惑かも知れないけど、でもこっちは親友の死で落ち込んでいるのだ。

 高校時代の後輩が少しくらいわがままなことをしても、許されるだろう。

 山野裕子など、駄洒落を思い付いたとかアイスが当たったとかテレビの星座占いが良かったとか、それだけの理由で深夜だろうと先輩後輩誰かれ構わず平気で電話をかけていたのだし。


 しかし結局、

 優は木村梨乃へと電話をかけることはなかった。


 自宅の電話からかけようとするまさにその寸前に、携帯電話にメールが届いたのである。大学フットサル部の主将からの、一斉送信のメールが。


 中国リーグで優勝したことにより、優のいる瀬野川女子大学フットサル部は新日本大学フットサル大会という全国規模の大会に出られることになったのだが、その大会についての連絡であった。


 出場校や独自ルールなどの大会規定などが決定したから、部のサイトを見ろ、ということであった。


 さっそく優はサイトをチェックした。

 出場校を見た瞬間に、どくんと心臓が跳ね上がっていた。


 しゆうめいいん大学という名がそこにあったからである。


 そこは、木村梨乃のいる大学であった。

 梨乃先輩と、戦う?


 優の顔は青ざめていた。

 手が、かすかに震えていた。


 新日本大学フットサル大会は、初戦から一発勝負のトーナメント。そのトーナメント表によれば、お互いに勝ち上がれば第二回戦でぶつかることになる。サイコロだけで考えれば、対戦しない可能性の方が高い。二校ともが勝利しなければ当たらないわけで、つまりは四分の一だからだ。


 しかし、その可能性があるというだけで、優の精神はすっかり乱れてしまっていた。

 なにに動揺しているのか自分でも分からない。

 ただ知っている人が所属しているチームと戦う。それだけのことなのに。


 自分をよく知る人物だから、心にまで踏み込まれるような気がして、ということであろうか。

 それとも、ただ単に知っている人間が敵となって立ちはだかるという、それ自体が経験したことなく、恐怖であるのか?


「ほじゃけえ……」


 優はぶるぶる震える手で、すがるように、遠山美奈子の形見となったヘアバンドをぎゅっと握り締めていた。

 震えが、ぴたりと止まっていた。


 関係ない。

 梨乃先輩であろうと関係ない。

 相手が誰であろうとも。

 美奈ちゃんのためにも、精一杯やらなくては。


 約束したじゃないか。

 このヘアバンドをつけて試合をし、一度も優勝を味わったことがないという美奈ちゃんにも優勝を経験してもらうんだ。

 そう約束したじゃないか。

 フットサルをしたくとももう二度と出来なくなってしまった、美奈ちゃんのためにもやらなくては。


 甘いことなどいっていられない。

 そうだ。

 なにがあろうとも、絶対に優勝するんだ。


 梨乃先輩と二回戦で当たることになろうと、構わない。

 倒すだけだ。


 優は、おでこにかかったもっさりとしている髪の毛をかき上げると、遠山美奈子のヘアバンドを額にかけてまとめた。


 顔を上げた。

 優の表情には、もう微塵の迷いも怯えもなかった。

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