始まり、過程、結果

シガ

女と少女

「お母、さん……助け……」

「うふふ」


 薄暗い地下室に助けを呼ぶ声と不気味な笑い声が小さくこだまする。

 一つしかない照明に照らされているのは包丁を手に持った女と手足を縛られ全身を真っ赤に染め上げている少女だ。

 二人の周囲には様々な凶器が散乱しており、何に使われたかは言うまでもないであろう、そう拷問だ。本来、拷問とは何か情報を自白させる目的で行わられるものだが、この女にとっては違う。ただ楽しいから行っているだけで、そこに意味はない。苦しそうな顔と声、痛めつける度にビクビクと震える体、痛みに耐え兼ねて媚びへつらう女の姿、そういった物を見たいが為の結果だ。


「助けて、だなんて失礼ですね。行為中にそんなことを言う子にはお仕置きです」

「あ……やめ、やめてやめてやめて!ごめんなさい!許してください!!」

「私は怒っているんです、どれだけ謝っても許しません」


 手に持った包丁を振るおうとする女を見て、少女は慌てて謝るがもう遅い。この女にとってやめる理由などないのだから。だが、今回は違った。振るった包丁が少女の肩に当たる寸前でピタっと止められたのだ。


「どうしても許して欲しいのなら一つだけお願いを聞いてください」

「聞きます!何でも聞きますから許してください!」

「元気なお返事ですね~、それでは誰か殺してきてください」

「……え?」


 軽く、それこそジュースを買ってきてと頼むような調子で人を殺せと宣った。


 これが壊れた女とこれから壊れていく少女の始まりである。

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