第27話 vs火属性”極”魔法 【全日本魔法剣技大会編:終局】

極魔法。

それは、大魔法の次の段階の魔法ではあるが、その性質、威力は大魔法のそれとは全く異なり、極魔法が使える魔法師は全世界的にみても数少ない。

努力で行きつくのは不可能とまで言われており、使用できる魔法師の圧倒的な潜在能力と、術者の大きな心境の変化により発現する。



「極魔法『アストラルファイア』!!」

九條が極魔法を発動した。

広大な範囲の魔法陣が展開され、瞬く間に視界が炎の柱によって閉じ込められた。

この『アストラルファイア』は魔法陣の展開されている効果範囲内に高密度の天まで届く炎の柱を作り、相手を燃やし尽くす技であるようだ。

「くっ、、!」

俺は苦悶の声を漏らさざるを得なかった。



私、九條 奏はこの戦いに少なくとも善戦以上はしないといけない。

洋介のためにも、自分のためにも。

こんなに強い人と戦うなんてめったにない。

クライストさんとも戦って、ほとんど魔法が通用しないまさしく最強な人だったけど、そのクライストさんに勝ったこの人はそれより遥か上の次元にいる。

だから、大魔法を二個重ねて使っても、全然効かない。

このままだと魔力が切れて、あっけなく負けてしまう・・。

と、その時。視界が真っ黒に染まった。

「---奏。君なら出来る。俺と好敵手ライバルだった君なら、できるさ」

どこからともなく声が聞こえてきた。

聞き覚えのある声・・それは、洋介。

姿は全く見えないが、声だけが脳内に響いてくる。

(「よ、洋介!!どこから・・。」)

私も心の中で念じてみた。すると、

「そんなこと今はどうでもいい。ただ、君なら使えるさ。大魔法の上の極魔法を。」

そう言われた。極魔法なんて、、実際に見たことはなく、使用できる人もほとんどいないと聞いたことがある。

「そう自分を卑下する必要はない。君は極魔法を行使しようと、そうするだけでいい。」

(「それはどういう・・。」)

「さぁ、時間だ。行ってらっしゃい、応援しているよ。」

その洋介の言葉と同時に、現実に引き戻された。

目の前には刀の切っ先をこちらに向けた新条君。

「これだけですか?」

彼はそう言ってきた。やってみるしかない、と心の中で思う。

「いいえ。まだです。洋介のためにも、こんな簡単に負けるわけにはいきません。」

手をかざす。脳内にいつもの大魔法のイメージがでてきたが、その奥に新しいモノが見えた。

藁にもすがる思いでそれを掘り起こし、私は洋介の分の思いも込めて、魔法を発動した。

「極魔法『アストラル星幽ファイア』!!」



俺の視界がとうとう真っ赤に染まる。

正直、これほど魔法の素質があるとは思わなかった。

極魔法まで使用するとは。だが、俺はこの威力の魔法は見慣れてはいる。

「一閃『夜桜』」

渡辺の時に使った技を放つ。しかし、炎の柱は完全には切れず、まだ辺りを業火が埋め尽くしていた。

「-ッッ!」

流石にキツい。このままだと、炎に飲み込まれかねない。

仕方ない、バレない程度に魔法もどきを使う。

(「蒼電そうでん一閃『閃光せんこう』」)

極細の蒼い雷を発生させ、超高速で辺りを一回転させ、今度こそ炎の柱を両断した。ついでにあたりのビル群の上の部分も斬り落とす。

「あ、ありえない・・!!」

九條の表情が一気に絶望の色に染まる。

そのまま俺は九條との距離を縮め、決めにかかろうとする。

「ま、だ、、!」

九條はまだあきらめずに、超高速の魔法を数多く打ち込んでくる。

俺はそれを全て紙一重で斬り落とし、ついに九條の眼前まで迫った。

九條は腰が抜けて、地面にへたれこんでしまった。

その九條の鼻の先に、俺は黒刀の切っ先を向ける。

「チェックメイトです、九條さん」

「・・はい。私の完敗です。」

こうして、俺は決勝戦に勝利。つまりはこの全日本高校魔法剣技大会に優勝した。

フィールドが元に戻って、観客席も見えるようになる。


The end of duel

winner、新条 輝

and

the end of all match

victor、新条 輝


空中モニターにその字が浮かび上がった。

すると、会場内から割れんばかりの拍手が送られてくる。

立って手を叩いている人もいる。

太陽坂はほぼ全員が泣いてしまっていたし、全視でみえる桜ケ丘高校のクラスメイト達も感極まっているようだった。

こうやって俺の任務は、取り敢えず成功した。

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