召喚術師は逝く(精神的な意味で)
笹団子β
第0話 バイト先は異世界でした
「…………うーん、なかなか良いバイトないなぁ」
どうも、自分は佐々木宗谷といいます。ピチピチの大学1年生です。……って、今時ピチピチとか言わねぇな。
現在自宅でバイト探しの真っ最中です。地方の大学に入ったのでアパートに一人暮らし中なのですが、親からの仕送りが生活費ギリギリなので、小遣いという者が存在しないのです。とはいえ、今まで世話になった親に、仕送りを増やしてくれ、なんて図々しいことは言えないので、小遣いは自分でバイトをして稼ぐしかないのです。
とはいえ、大学入りたての身としては、この時期に講座をサボるなんてことはできない。となると必然的に夜中のバイトになるわけだが、飲食店は不器用なので除外。肉体労働もこの微妙にぽっちゃり体系だと難しいだろう。接客業もコミュ障なので無理。となると、コンビニのバイトぐらいしかないわけだが、なかなか空いてるところがない。
そう考えていた時、ふと一つの記事が目に留まった
『異世界コーズワルドのβテスター募集中!』
記事を読み進めると、開発中のゲームのβテスターを募集しているらしい。なんでも、一日に2時間以上そのゲームを遊んで、感想やバグ報告をすればいいらしい。時間帯自由なら講座を休む必要もないし、時給も悪くない。何よりゲームは大好きだ。
というわけで、俺は意気揚々とそのバイトの面接に応募した。
*数日後*
「……はい、面接は以上です。お疲れさまでした」
「お疲れさまでした」
ふぅー、緊張したー。なんせバイトの面接なんて初めてだからなぁ。何度手に書いた人を飲み込んだことか。激しく書きまくった手汗でせっかくの一張羅のスーツのズボンもかなり濡れてしまった。膝の上に手をのせておいてよかった。股間だったらお漏らしを疑われるほどだった。
「佐々木様、面接は合格です。あなたを異世界コーズワルドのβテスターとして認めます。このアルバイトの件については他言無用でお願いします」
面接の相手だった、いかにも出来るキャリアウーマンといった容貌の美人なお姉さんが話しかけてくる。ポーカーフェイスなのか、面接中一切表情を変えなかったので余計に緊張することになった。
「では、βテストの詳細な説明をさせていただきます」
はいはい、どんな内容でもどんとこいですよ。……どんとこいはちょっと古いか?
「佐々木様には、今から実際に、異世界コーズワルドに行っていただきます」
…………ん?
「異世界に行っている間、こちらの世界の時間は止まっているのでご安心ください。数日に一度、経過報告をしてください。そのための手段はこちらでご用意しております。向こうの世界で死ぬとこの世界に戻ってきます。それ以外の方法でこの世界に戻ってくることはできません。また、一度この世界に戻ってくると、二度と異世界コーズワルドに移ることはできません。その他の詳細な情報は現地に到着したのちにお伝えさせていただきます」
「…………すみませんやっぱりこのアルバイト辞退させてもらいます……ッ!?」
なんだ、これ? 体がしびれて、まったく動かない!?
「それでは、行ってらっしゃいませ。佐々木様、ご健闘を」
女性、いや、その形をした何かは指を鳴らし、初めて表情を笑顔へ変えた。
笑うと可愛い系なんだな、なんてことを考える間もなく、俺の視界はそこまで眩しすぎない光によって埋め尽くされた。
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