Fragile~はかなきもの~

FOKA

プロローグ

 昔々、今から500年前の物語。

 人間達は皆、争いもなく、平和に暮らしておりました。

 平和に暮らしていた人間達ですが、突如現れた魔王により世界は大変なことになってしまいます。

 そんなとき、どこからともなく現れた勇者が魔王を封印することに成功するのですが、その時の戦いで世界は滅茶苦茶になってしまいます。 

 人間達はその後、皆んなで協力し世界を再び人間達が住み良い世界に変えました。

                          

                               おしまい 




 物陰に身を隠し、息を潜めながら獲物が現れるのを待つが、一向に現れる気配がない、そんな状態が数時間も続き、正直諦めかけていたが、今日は絶対に獲物を獲ってくるっと豪語した手前、そう易々と村に帰ることは俺のちっぽけで、安いプライドが許さなかった。

 そんな事を思っていると、遥か前方の瓦礫からモンスターが2匹、勢いよく飛び出して来る。

 ヴィーゼルか。

 こいつらは音に敏感なモンスターで、とても臆病な性格をしており、一度警戒されたら最後、その日は姿を現すことがないので、できれば気付かれないうちに仕留めたいところであるが……。

 俺の位置からでは、モンスターまで距離があって、厳しいな。

 足場も悪いこともあり、恐らく音を立てずに近づくのは至難の技である。

 だが俺に抜かりはない。手信号でモンスターの近くにいる仲間に合図を送り、モンスターの存在を知らせる。

 通常、人間なら手の細かい動きなど見えないほど、距離が離れているが、この場合、その条件に当てはまることがないので、手信号で合図を送ることが可能なのである。

 合図を受けっとた仲間がすぐに場所を変え、モンスターに真上から襲撃可能な場所に、音もなく、まるで獣のように飛び移ると、すぐさま真下にいるモンスターに狙いを定め、飛びかかる。

 獲物に落ちてく様はまるで、ある種の芸術的な美しさを感じさせるほどの綺麗な飛び込み、そして、獲物をその鋭い爪で突き刺す瞬間は、獣そのものであると感じさせるものであった。

 獲物を仕留めたところを確認し、俺は急いで仲間の元へ駆け寄り、

「ワトスー、やったな!」

 おもいっきりハグしてやった。

「ワトスニヒキモヤッタヨ」

「ああ、ちゃんと見てたぞ」

 ワトスを離すと、モンスターの返り血がべっとりと着いており、無論、ハグをした俺の服にもモンスターの返り血がつく形となる。

「帰ったらお風呂、入ろうな」

「ワトス、オフロキライ」

 ダメだっと、駄々をこねるワトスの頭を撫でながら村に戻る、狩ったモンスターはワトスが両脇に抱えながら村に戻るのだが、返り血を浴び、両脇に仕留めたモンスターを持っている姿は、ちょっと怖いと思ってしまった。


 ワトスは獣人である。性別は正確に言うならば女と言うよりメスと言うのだろうか。

 身長は155センチくらいで、手首、足首の先は人間と違い完全に獣、肉球があり太い爪が間に隠れており、頬っぺたからはヒゲが数本出ていて、目も人間よりは獣に近い感じであるが、それ以外は人間と対した違いはない……、後は獣耳と尻尾が生えているくらいか。

 前を歩くワトスの臀部、よりも少し上、お尻と腰の間ともいうべき場所から、尻尾が生えているのだが、それが歩くたび、右に左にふわふわと揺れる。

 どうにも気になって、そっと右手でワトスの尻尾をもふもふする——

 これはやばい。

 普段ワトスとはひとつ屋根の下で一緒に暮らしていて、触る機会なんていくらでもあるけれど、シチュエーションや、そのときの気分で興奮度は全く違ってくる。今はモンスターを狩ることに成功して、テンションが上がっていることもあり、普段の触り心地とはまた違った感触が、俺をさらに興奮させていく。

 あー、これはいい。最高だ。

 この尻尾を枕にして寝たい。

 いつもならこの辺でやめておくが、今日は止まらなかった。

 さらに奥へ奥へと指を進めていき、やがてその感触はもふもふから、ぷにっとした人肌感じるものに変わり、そのまま窪み、凹みに指先を走らせ、下へ進めていくと……。

「ソレイジョウハダメ!!」

 ワトスの叫び声が聞こえるのと同時に、体を回転させ、目の前のもふもふは消え、気づいたときには俺の右の脇腹を尻尾が殴打した。

 だはぁ。

 俺は体をくの字にさせて咽た。

 くの字といっても横にくの字である。前屈の体勢ならまだしも、本来そんなに曲がらないであろう横っ腹が綺麗にくの字である。正直、体の中がどんなことになってるのか想像したくはなかった。

 全く、この恥ずかしがりやめ。

 倒れて向かい合った地面に向けて、ポツリとつぶやいた。


 狩場から1時間程で村に到着したあと、ワトスを家の洗い場に押し込め、モンスターをある装置に入れると、モンスターの体内から鉱石を取り出していく。

 この装置に名前はなく、どのような原理でできているかもわからないが、モンスターをこの装置に入れると、モンスターの体内にある鉱石を自動で摘出してくれる。モンスターによってこの鉱石の大きさ、量、純度が違い、町に持っていくとお金に交換できる。

 今は月に一度、集めた鉱石をまとめて町へ持っていき、そのお金で食料や生活品を手に入れて生活をしている。

 機械から鉱石を取り出し、足元の壺に放り込むと、ガシャっと、石と石がぶつかり合うような、そんな音が壺の中から響いて、

「そこそこ溜まったかな」

 壺の中を覗き込みと、壺の8割程が鉱石で埋まっていた。——昔はもっとモンスターがいて、たくさん鉱石が獲れたんだけどな……。

 はぁっと、軽くため息をついていると、洗い場のほうからドタドタと足音が響いてくる。

「ゴ・ハ・ン! ゴ・ハ・ン!」

「ちゃんと体洗ったか?」

 モンスターの返り血をベットリとつけて帰ってきたので、念入りに体を洗うように言っておいたが、お風呂っというより、体が濡れるのを嫌うワトスは、ほとんど汚れを落とさないまま、洗い場から出てくることもあるので、たまに確認してやらねばならない。

 そんないつもの感じ、日常の動作で。

 声のした方を振り向くと、一糸纏わぬ姿でテーブルの横に立つワトスがいた。

「ワトス、服を着ろ。風邪をひく」

 俺はワトスに向かって、何ら邪な感情などなく、あくまでいつも通りに、平常心で、澄まし顔で言った。

「デモ、フクキルトムシムシスルヨ」

「じゃあせめて、乾くまで洗い場の方にいてくれ」

「ア! ソノアイダニ、ワトスノゴハンタベルキデショ」

「誰も食べたりしないから、安心しろ。俺が一度でも約束を破ったことがあったか?」

「アルヨ」

「それは初耳だな」

 まぁ、昨日一緒に出かける約束をしていたが、ワトスが起きてこないので1人で出かけたがな。それに関しては俺は一切悪いとは思っていない、ワトスが起きてこないのが悪いので。

 咳払いをひとつして、

「あーなんだ、とにかく服を着るか、乾かしてくるかしなさい。それまでは飯抜きな」

 桜花ノイジワルっと、その場で子供が駄々をこねるように、ジャンプをしながら、ぶつぶつと文句を言ったあと、洗い場に戻っていった。

 ワトスの後ろ姿が洗い場に消えるのを確認するため、じっと見つめる、そしてその姿が洗い場に消えたのを確認し、俺はやっと視線を別のところに移した。

 こんな事はしょっちゅうあるのだが、全裸で出で来たのは久しぶりだったので、少し驚いてしまったが、ひとつ屋根の下暮らしているのだから、こんなことだってあるさっと、ちょと興奮気味に言っている自分に言い聞かせた。

 俺だって年頃の男で興味がないわけでもない。むしろ興味しかない。

 目を瞑れば、あの光景がまぶたに焼き付いていて、いつでも俺の脳内で再生可能なわけで。

 っというわけで、早速目を瞑る俺。

 すると程なくして、ワトスがジャンプしていた時の光景が今まさに、俺の正面に、リアルに、掴めそうなほど近くで……プルン、プルン。

 卑猥な効果音に聞こえるだろうか?

 だが、これが意外と的を得ていると自負している。

 ユサユサ——これではワトスの胸の大きさが伝わらない、むしろ小さいの? っと、思わせてしまうだろう。逆に……。

 バインバイン——これで胸の大きさは伝わるかもしれないが、この効果音ではあまりにも大きすぎなのでは? 巨乳を通り越して奇乳と思われるのも嫌なので。

 つまるところ、プルンプルンが1番程よい大きさであることを伝えられる効果音であると結論付けられるだろう。

 俺はもし、胸の大きさを他人から聞かれるようなことがあれば、この、ユサユサ、バインバイン、そしてプルンプルンを使い分けることで、相手に正しく、気になる女の子の胸のサイズを伝えられるであろうと思っている。

 まぁ、使ったことないけど……。

 ワトスの胸は、服の上からでは想像もできない動きをしていたことを、俺は見逃さなかった。

 ワトスがジャンプした瞬間、体は宙に浮き、胸は逆に下に向かい弾んでいくが、体が大地に引っ張られ、母なる大地に降下を始めたとき、今度は胸が上へ向かい弾んでおり、やがて大地に立ったその体は、再び大空を目指すが如く飛び立とうとすると、胸は母なる大地へと降下を始め、二度目のジャンプが慣行されたとき、胸、おっぱいは完全に到着することを許されず、上え引っ張り上げられた。

 この映像が、俺の頭の中で何回も、何回も繰り返し流れ続けた。

 しばらく堪能したのち、自分を落ち着かせようと深呼吸を2、3回行うと、いつもの平常心に戻った気がしたので、それを確認するため、そっと目を瞑ると、まぶたの裏にはしっかりと焼き付いたワトスの胸の残像がまだはっきりとあった。


 食事を終え、寝床についていると隣で寝ているワトスがこちらを見つめて、

「アシタハドウスル?」

 っと、言いながらも狩りに行こう!っと目で訴えかけているようだった。

「明日は街に行こうと思ってる。そろそろ溜まった鉱石を交換しに行かないとな、それにもう……」

 食料も少ないしっと、ワトスに聞こえないくらい、小さな声でつぶやいた。

 ワトスに食料のことを話すと、ご飯は? っと、なり、寝るどころではなくなってしまう。

 ワトスはブーと頬を膨らませそっぽを向いてしまい、不貞寝してしまった。

 ワトスがこちらに背を向けて寝てくれたおかげで、尻尾が丁度俺の目に前に現れた。

 しめた!

 と思い、すぐさま尻尾に抱き着き抱き枕代わりにさせてもらうと、特に嫌がるそぶりは見せず、ワトスも、触られているのも悪くなそうに、可愛い寝息が聞こえてくる。

 昔は……近くに寄るだけでも嫌がってたんだけどな。

 今では毎晩こうして一緒に寝ていたりする。

 俺も何だか眠くなって来て、ワトスのもふもふの尻尾を堪能しながら、深い眠りに落ちていく。





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