Jester And The Queen

加湿器

Jester And The Queen

むかしむかしの そのまたむかし

とある姉妹が 住んでいた


いじわる長女は の連れ子

の連れ子は 白痴の子


或る時おとうは 病で死んで

かかあと長女は ぜいたく暮らし


おとうの連れ子の 白痴の子

長女はやっかみ こき使う


知るか知らずや 白痴の子

たたずむ姿は マツユキの花


ある夜長女は 大広間

白地のドレスの 裾踏みつけて


転ぶ白痴を 大笑い

小間使い達も 見ないふり


そんな暮らしも 幾年月

お城で開かる 舞踏会


かかあと長女は めかし込み

白痴を置いて 馬車に乗り


たどり着きたる 舞踏会

だけども王子は 上の空


やがて夜半の 更けるころ

広間の誰もが どよめいた


現れたるは 白痴の子

奢侈なドレスに 身を包み


怪しく笑う 壁の花

王子の心は 奪われて


さてこの先は ご承知通り

十二時の鐘と ガラスのシューズ


だけども王子を 悩ませた

白痴の女王が 笑わない


奢侈な着物に 煌めくジュエル

抱えの楽団 舞う道化


だけども女王は 笑わない

深く王子を 悩ませた


或る日女王の 小間使い

裾を踏んづけ てんころりん


王子は厳しく しかったが

顧みてみて はた気付く


女王のくちもと 少しだけ

ほころび浮かぶ くすくす笑い


これ幸いと 飛びついて

王子は国中 触れ回る


「女王の前で 転んで見せろ

笑わせられたら 褒美をやろう」


どうやら女が 転ぶ度

白痴の女王は くすくす笑い


転ぶ女が 若いほど

目に見えるほどに 機嫌よく


王子はたいそう 喜んで

若い女を 集めさせ


従わぬものは 枷つけて

兵隊たちに 馬牽かせ


或るときはたはた 気が付いた

女王が声上げ 大笑い


転ぶ女に ゆび指し示し

腹を抱えて 大笑い


王子は女に 仮面をかぶせ

後宮の間へ 連れていく


「約束通り 褒美をやろう

お前は今日から 女王の道化


誰もお前に 口出しできぬ

一番えらい 愚か者」


さても民ども 納得いかぬ

連れ去られたる いとしい娘


或るときお城の 兵隊さん

転び女を 


それを見つけた 親父さん

はげた頭に 火が付いた


「もはやなんとも 我慢が効かぬ

お城に火をつけ してやる」


親父の言葉に みな続く

手に手に鍬と フォークをもって


辟易したるは 兵隊さん

一人残らず 逃げ去った


だけども民ども 気分は晴れぬ

手に手に鍬と フォークをもって


小間使い達を 皆殺し

抱えの楽団 構いなく


やがて民ども 後宮へ

王子の首を 天掲げ


けり破られたる 後宮に

残っていたのは 影二つ


いじわる長女は 素っ裸

首をくくって 死んでいた


白痴の女王は けたけたと

揺れる死体を もてあそぶ


燃える後宮 影二つ

消えてしまうまで 笑ってた


やがてお城も 消え果てて

このお話は おしまい おしまい

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