窓に張り付いている
陰角八尋
怪談「窓に張り付いている」
オチがなくて、高校1年生の時に経験した話なんだけど。
テスト勉強の時期に、放課後に友達2人と一緒に勉強しててさ。その時に日直が俺で教室の戸締り担当だったんだけど、日直だから最後まで残るし、どうせなら勉強しようと思って友達誘ってやってたんだよ。
でもさ、やっぱり友達と勉強する時って、お喋りしちゃう時間とかあるじゃん? 俺もその時は友達とお喋りしてて、ずっと勉強の手が止まってたんだけどさ。
それで喋っている時に、いきなり教室の外から「ドン!」って音がして。みんなビックリしちゃって。なんか重いものが落ちてきた感じだったんだけど。3人でバッて窓の外を見たんだけど、何もなかったんだよ。
ただ、その時に窓じゃなくて廊下側の机に座っていたから、窓の外がどうなっているか見えなかったんだよね。で、その時誰が見に行くかで「お前行けよ」「嫌だよ」でもめてて。そしたら、また音がしたほうから今度は「バン!」って鳴って。
もっかい窓を見たら、女の子が窓に張り付いて真顔でこっち見てるんだよ。
本当に「うわっ!」って声出るくらい、もう俺も友達も驚いたんだけど。動けなくてジーっとその子と見つめあっちゃって。多分、体感的には数十秒経ってかもしれないんだけど。もう目があってたけど、なんか、段々これイタズラじゃないかなって思えてきて。
ここで怖い話なら、「普通そこは二階で立てる場所がなくて~」ってなるけど、その教室一階でさ。で、普通に人が立てるし、幽霊にしてはハッキリ見えてるし。俺も友達も霊感なんてないから、もしかして生徒の誰かがなんか脅かしてきたのかなって。全然知らない子だったけど、友達とのノリかなんかで「人脅かそう」みたいになったのかな~って。
そう思ったら、ちょっと怖くなくなってきたんだよね。友達も「あれ?」みたいに思ってきたらしくて、2人の内の1人が「脅かすなよおい!」て窓に近づいていったんだよ。ちょっとビビったのをごまかす風に言って。
その時まだ女の子が窓に張り付いていたんだけど、ちょうど友達の体で女の子が見えなくなった時、その友達が「あ」って言って。ピタって止まったんだよ。
なんかもう、動けなくなっている感じで。「え、何?」と思った次の瞬間に、友達の体で隠れてた女の子の横顔が見えたんだよ。あ、どこか行くのかなって思って、女の子がそのままバーって出てきたとき、俺も窓に近づかなかった友達も固まっちゃって。
明らかに後頭部がグチャグチャになってて、背中が血で真っ赤になってたんだよ。最初はこっちを見ていたから気づかなかったけど、体を横に向けたから、それで初めてそれに気づいて。そのまま歩いて行って、教室の窓からは見えなくなってさ。
よくあるスーって消えていったとか、目を離したら消えたとかじゃなくて普通に歩いていったけど。でも、出ていた血とか後頭部とかリアルだったから、もう絶対生きてる人じゃないというのは分かって。俺と友達三人で、もう一言も喋れなくなっちゃったんだけど……。
そこで最初の「ドン!」って音のこと思い出して。あ、あれって女の子が落ちてきた音だったんだって。
それからもう、追いかけて確かめることもできなくてさ。数分してやっと固まっていたのが動けるようになったんだけど、もう俺も友達も勉強する気になれなくて、その日はみんな黙ってそのまま帰ったんだよね。
最後にもう、本当に怖かったんだけど、窓に近づいて外を見たら何もなくて。ただ、友達と見てたからアレは絶対に見間違いじゃないんだよ。
で、調べたんだよ。普通、あんなことがあるなら絶対に何か昔にあったはずだから。けど、先生に聞いてもネットで学校のこと調べても、何も見つからなかった。自殺とか事故とかもないし、学校が建つ前のことを調べても何もなくて。
他の友達とか話しても「嘘でしょそれ」みたいに言われて、信じてもらえないし。
結局あの子が何だったのか今でも分からないんだけど、一個だけ気づいたことがあってさ。
制服がうちの学校のじゃなかったんだよね。うちの学校はブレザーだけど、あの子セーラー服だったなって。
もう、本当に何なのか分からなくて。それっきりその後は何もなかったんだけど。
とりあえず、それから卒業までずっと、放課後は教室に残らないようにしてたよ。
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