異例すぎる三歳児 司祭side

今日は待ちに待った検定の日。


ここはイーリス王国でも最古の神殿、ゲネシス神殿。


そして本日は、イーリス王国各地の三歳児とその家族達が、この神殿…通称"教会"に、集まっている。


貴族もいるが、普通に平民達もいる。同じ空間に。


まぁそれを嫌がる貴族もいるのだが、そんな特別扱いをするような場所でもない。


神の御前では、貴族だろうが何だろうが皆平等の立場にある。当たり前だ。


当たり前の事なのに、反発する貴族達。面倒なので、そういう者達の検定は神殿の入り口辺りでさっさと済ませる


本来の場所では他の神官達がやっているので大丈夫だろう。


今ある程度終わったので、ホールへ移動しようと、足を運んだ。


ホールへ着いて、祭壇の方へ向かう途中に、周囲とは全く別の雰囲気の五人組を見かけた。


見覚えのある銀髪の男性と金髪の女性を見て、納得した。

 

…あの方達は、イーリス王家の親戚の、トリファー公爵家の面々だ。


ご当主であらせられるギルスティード・フロート・トリファー宰相殿。


その妻の、リリィ・フロート・トリファー公爵夫人。


双子の、ジルード・フロート・トリファー公爵令息。カイラス・フロート・トリファー公爵令息。


そして、末子のライランラック・フロート・トリファー公爵令嬢。


今回、ライランラック公爵令嬢が三歳児なため、検定を受けに来たのか。


公爵家で、あの方々なら雰囲気が周囲と違うのも頷ける。


ライランラック嬢の噂は度々耳にしているが、検定するだけだし、騒動も何も起こらんだろう。


まさか、数時間後にこの時を自分を恨むことになるとは、予想もしなかった。



◇◇◇



例年通り、検定を行う過程の一つに組み込まれている台詞を私が言って、それにトリファー公爵家の方々がそれに続く。


それで水晶が属性の色に輝き出すのだが……なぜかその時は、白く、強く輝き出した。


その場にいる全員が、眩しさにあまりに目を覆う。


光が収まると、ライランラック嬢がいないことに気付く。


慌てふためく神官を宥めつつ、騒然とした周囲に帰るよう指示をする。


そして暫く時間が経った後、またもや水晶が光り、ライランラック嬢が現れた。



◇◇◇



ライランラック嬢……長いのでライラ嬢が現れて、とりあえずその場に残っていた者達はライラ嬢を連れて尋問部屋へ移動した。


「…ライラ、今回の事態、どういうことか、分かるよね?」


そう宰相殿がライラ嬢へ問うと、ライラ嬢は観念したようにコクリと頷いた。


宰相殿がこの数時間、どこへ行っていたかを聞くと、予想外の返答が待っていた。


神がいる白い謎の空間、と。


一瞬思考がどっかへ行った。仕方ないだろう。


三歳児の言葉から神と白い謎の空間という単語が聞こえてきたのだから。


宰相殿は自身の子供にどんな教育を施したんだ?? 


どうやったらこんな風に育つのだろうか。はて、どう対処すれば良いのだ??


「「「「規格外にも程がある!!!」」」」


思わずそう叫んでしまった。は?? どうやったら神と対面出来るんだ!?


普通ありえない!! そもそもその白い謎の空間ってなんだ!? 意味が分からん!


………………この白銀髪の子供は人間じゃない。人間の皮を被った何かだ。


失礼だが、ゲンナリしながらそう思ってしまった。


何を食べて育ったらこうなるんだろう。


しかも本人はその事を普通を言い張る。それに皆が反対する。


何がどうしてこうなった??


「良いかい、ライラ。君が毎回毎回しでかす事は全く普通じゃないから!! 異例中の異例なんだよ!? 分かるかい!?」


「頼むからライラ、変なのに目をつけられないでよ!! 本当に! 尻払いするの僕達なんだらね!?」


「お前は相変わらずのヤバさだな! 今回はそのヤバさが歴代の中でもトップクラスに入るぐらいヤバいからな!? いい加減自重してくれ!」


青褪めて興奮しながら詰め寄る宰相その息子達に、ライラ嬢は魂の抜けた顔で呟いた。


「遠くのお花畑でおばあ様が手を振ってるな〜」


なんか聞いてはいけないモノが聞こえた気が………ってライラ嬢が危ない状況に陥ってる!?


余りの三人の騒ぎっぷりに、とうとうライラ嬢が壊れてしまったようだ。


「御三方、冷静に! 落ち着いてください! ライラ嬢が三途の川見えちゃってますから!! 崩壊してるので落ち着いてください!!」


ライラ嬢を抱えてそのまま別の部屋へ全力で走った。


………寝よう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る