PROLOGUE-2

 村人達が草原を進む影に手を振っている。

 草原を進む三つの影。剣の勇者、レイ・ブリンガー。レンジャー、ギリー・ネイジー。聖騎士パラディン、アレス・G・アムドレッド。彼らは一度だけ大きく手を振り返すと、そこからは振り返る ことをせず、真っ直ぐに前を見据えて歩んで行く。


 彼らが目指す先は王都。魔王誕生の報せを受け大きく動いた世界。その荒波に飛び込むべく、三人は使命を胸に旅立つのだ──。




 そしてその光景をずっと遠くから眺めているのが俺、皆さんご存じ古森束事ですこんにちは。


 前回アレスに見つかった反省点を活かし、三人が豆粒ほどに見えるような距離から様子を窺っております。もっと近くで見たいけど、もしまた撃たれでもしたら今度こそ死ねる。命大事にで生きていこう。


 あの戦いから三日経ち、泣くだけ泣いてこの世界で生きていかなければならないことを理解した俺は今までのゲーム気分から一転、生き方を見直したのだが……。

 正直、ただ生きていくだけなら魂の森に引きこもっていれば問題ない。ミストバットの時点で森の中に敵はいなかったのに、今は更に進化してるからな。おまけに敵からは見つからない装備持ちだ。よっぽどのことがない限り死なないだろう。


 だけど、ただ食って寝ての生活に現代日本で生きてきた娯楽大好きゆとりっ子が耐えられるか? いいや、耐えられない。

 なら、当初の目的通り推しの活躍をこの目に収めていく他ないだろう!


 ストーリー通りに進めば次の目的地は王都。レイが王の前に立ち、本格的に剣の勇者として活動し始める舞台。

 もっとも、今回のイベントみたいに筋書きが違うって場合もあるかもしれないが……まあ、それはそれで楽しませてもらいたい。


 長々と言い訳にを連ねてしまったが、要するにせっかく得た二度目の生、楽しまなきゃ損って話だ。

 草原を歩む背中を見失わない程度の距離を保ち、青空の下を羽ばたいていく。眼下に見え るのはあの日液晶越しに眺めた世界、今の俺が生きていく世界。


 大事な人達との別れから切り替えることなんて、一生かけてもできることかわからないけれど。

 とにかく俺は、この世界で生きてみようと思う。


 NEW GAME改め……NEW LIFE、スタート。



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