第5話 ピヨ郵便

「約束の品を出してください」

 ヒヨコに凄まれた。

「あなたが出すと言って、いつまでも出さなかったもののことです」

 はて、なんだっけ。

「楽しみに待ってたのに、いつまでも届かなくて、ニワトリになっちゃいそうです」

 約束しておきながら忘れているなんて不誠実だよな。早く思い出してあげたい。

「文字を読む練習だってしました。ひらがなだったら読めますよ」

 そこで思い出した。そうだ。春になったら手紙を出すよ、と約束をしていたのだ。

 僕はピンク色のインクで、ひらがなだらけの手紙を書いた。おそくなってごめんなさい、と最初につけて。

 切手風のシールを貼り、郵便配達っぽい服を着た。

「僕から郵便です」

  ヒヨコに手紙を渡す。

「ついに来た! きちんと読んで、お返事を書きます! 待っててね!」

 嬉しそうなヒヨコは、自分よりも大きな便せんを器用に広げ、ふむふむ、と読み始めた。

 これだけ待たせてしまったんだ。いつまでも待つよ、君がニワトリになっても待つよ。

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