輝きの不如帰 〜細川藤孝に転生したので金の力とハッタリ外交で室町幕府を再興して将軍を我がものにする〜
夏樹とも
序 章 輝きの不如帰
昨夜の軍儀で
史実に名高い、あの『山崎の戦い』で
兵も数を
のちに
そして……光秀は歴史から消えるのである。
我らは光秀とは違い大山崎の町を抑えることができた。
天王山を我らが本陣とすることができたのだ。
地の利は得た。
大山崎の町とは何年もの付き合いで支持も得ている。
さらに光秀とは違い、我らには
だが兵の数は明智光秀軍と同じく数を揃えることはできなかった。
敵は2万を超え、我らは1万2千
あとは兵の質と将の活躍に頼るほかはない。
両軍が大山崎の町の西に流れる
キョッキョキョキョー♪
天王山の
あれはウグイスかそれとも……
ウオー!
戦場より上がった
我が軍右翼は2千の軍勢であり敵左翼は3千である。
数の上での
天王山
両軍が上げる
カチャカチャ。
と、
「我が右翼部隊の働きにより
右翼部隊は寡兵でよく守ってくれた。
ひとまずは安心する。
続けてほかの伝令も走ってくる。
「
「敵右翼に
伝令が忙しく行き交う。
伝令部隊はよくやってくれている。
我が主は特に動揺の色は見せていなかった。
普通なら勝ち目のない
昨日の
実は引き分けでもよいのだ。
この
たとえ負けたとしても敵のこれ以上の侵攻を防げれば戦略上の目的は達成できるのだ。
そういえば「戦闘目的は敵の侵攻阻止である」といった時の
クセのあるお味方で頼もしくはあるが……
「敵右翼部隊前進開始!」
新たな伝令が敵の侵攻を告げ、俺のくだらない思考を停止させる。
敵右翼を率いているのは、この時代の
正直言って鬼十河相手に同数の軍勢で戦って勝てる気がしない。
頼むから3倍の兵をくれ。
俺には鬼十河より少数の兵でもって対陣することを喜ぶあの
「敵中央部隊も前進を開始しました」またまた伝令が駆け込んで来る。
敵中央部隊は
すでに我が右翼にけしかけている敵左翼は
三好家の長老ともいわれ、のちに三好三人衆の筆頭ともなる
他にも
そして敵の本隊は織田信長の前の天下人とも言われる畿内の覇者、
我らが対陣するのは三好長慶みずからが率いる三好家の
本来、全盛期の三好家に渡り合える大名など、この畿内に居るわけがないのだ。
三好長慶が長生きし、その
その全盛期の三好家を相手に一戦かますのだ。
正直いってこんな無茶な
これで終わりにしたい。
そう願わざるを得ない相手だ。
◆
敵の右翼、三好家最強の鬼十河が率いる軍勢が
ダダーン!
我が軍の左翼前方から轟音が響き渡った。
左翼の轟音は本隊より左翼に貸し与えた、俺が揃えた鉄砲隊3百による一斉射撃の音だった。
率いるのは
戦国最強の鉄砲
鉄砲隊3百による一斉射撃は水無瀬川を渡河しようとする鬼十河の出鼻をおおいに
鬼十河の軍勢が水無瀬川の
そこに独特の喚声というか
鉄砲隊が上げた
そう、我が左翼を率いるのは
すまないが戦国時代において、鉄砲3百の一斉射撃による一撃後の長尾景虎による突撃を超える戦法を知っている人がいたら教えてくれ。
またはそれを防ぎきれる武将がいたならば是非教えて欲しい。
悪いが俺はどちらも知らない。
戦況が一変した。
長尾景虎の突撃で鬼十河の隊が崩れたのだ。
数に
だがそこに敵の安宅冬康が率いる3千の遊軍部隊が支えに入る。
さすがは三好長慶である。
戦況の変化にも即座に対応したのだ。
だが、それでも越後の龍の勢いを止めることはできなかった。
鬼十河を退却というかもはや
「あれは一体なんなんだ?」
「なんだと申されましても、あれは我が左翼部隊の長尾景虎勢にございます」
長尾景虎の軍勢が十河勢の援軍に現れた安宅冬康勢に、その
その長尾勢の動きは戦場の中央でグルグル回るが
山の中腹にある本陣からは長尾景虎勢の
我が
先ほど鬼十河に対するに3倍の兵をくれと言ったが、長尾景虎と対するには3倍の兵でも足りないな。
3倍の兵しか貰えなかったら、とっとと逃げ出すことに今決めた。
「正直信じられない強さであるな」
我が主もその活躍を
「あれが噂に聞く
「あの動きがそれか……しかしあれは
我が主の
その軍神がまさに安宅冬康をも食い破ろうとしていた。
長尾景虎率いる3千の軍勢に対し、鬼十河の4千と安宅冬康の3千の軍勢では明らかに足りなかったのである。
……マジですか。
ダダーン! そこにまた鉄砲の轟音が響き渡った。
軍神の後方で水無瀬川を渡河した津田妙算率いる鉄砲隊3百が、今度は横合いから敵中央の三好之虎の部隊に対して撃ち掛けたのだ。
敵中央部隊の三好之虎率いる4千の軍勢は右側から鉄砲の一斉射を受け、さらに
三好之虎の軍勢は横合いからの鉄砲と正面からの朝倉宗滴の攻勢を受けても、
長尾景虎の
十河勢・安宅勢は体勢を立て直すこともできずに、三好長慶率いる本隊の方向へ壊走している。
その2部隊を食い破った越後の龍は相変わらずグルグルと回りながら、必死に朝倉宗滴の攻勢を支える三好之虎勢にその後方から襲いかかったのだ。
横合いから鉄砲の一斉射を受け、正面には朝倉宗滴の攻勢、そこに後方からの長尾景虎である。
敵中央軍の三好之虎もこれには
正直言って同情してしまう。
三好之虎勢はなだれをうって敗走し、それは敵左翼を率いる三好長逸の軍勢を巻き込むことになってしまった。
そこに三好長逸の攻勢を開戦当初から受け止め続けて来た、我が右翼の
三好之虎と長逸の軍勢は算を乱して北の山側へ敗走することになる。
山への敗走であり、逃げるに難しく三好之虎と長逸の両軍は相当数の
朝倉宗滴と斎藤道三による追撃なんぞ受けたら、命なんていくつあっても足りないだろう。
俺は生きていられる自信がない。
本陣からは敵本隊の三好長慶が後方の
三好長慶の本隊は十河隊・安宅隊が崩れて道をふさぎ、結局戦線参加ができなかったようだ。
「我らの勝利じゃ!」
我が主が嬉しさのあまり抱きついて来て俺はその場に倒れ込んでしまった。
追撃中止の伝令を出したいところだったのだが無理もない。
1万2千の寡兵で倍近い三好長慶率いる2万の軍勢を潰走させたのだ。
喜ぶなという方が無理である。
正直自分でもあり得ないと思うのだが……まあこのメンツならあり得るのか。
長尾景虎や朝倉宗滴、斎藤道三の軍勢が勝利の鬨の声を上げ始める。
その鬨の声の中で、今日この日の勝利のために費やした日々と費やした銭が頭に思い浮かんだ。そう、全てはあの日から始まったのだ――
戦国時代に転生し、現代知識を駆使した商売で銭を荒稼ぎした。
鉄砲も買えるだけ揃えた。
銭と外交を駆使して現時点で戦国最強と思える頼もしい武将達とその軍勢をかき集めた。
全ては今日この日の勝利のためにあったのだ。
とにかく勝敗は決した。
この勝利を
もう
幕府の
文句は言わせない。
文句を言ってくればそれを口実に攻め滅ぼしてもよい。
我が主を悪人にはしたくない。
そう我が主の
あの鳥は――そう、
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