Night which doesn't end─終わらない夜─

羽九入 燈

第一章 おそとにでよう!編

第0話 とある少女の話1

 煙が宙を舞った。

 ──そんなことをしながら、見た目十三歳ほどの少女は夜闇の中で石の上に座りながら、ぽけーっとしていた。

 右手には煙草が握られており、多分その先端から煙が出ているのだろう。

 しかしそれは暗くて見えない。

 

 バキッ───と音がした。

 少女が足を少し動かした際にちょうどそこに落ちていた小枝を踏んでしまったのだ。

 まあ、明かりひとつありゃしないのだから踏んでしまうのは当然と言えよう。

 なあに、音を出したからと言って、獣やら魔生物やらにほとんど襲われることはない。

 しかしまあ、それは〝ほとんど〟であって〝完全に〟ではないので気を付けなければならないのだけれど。


 石の上に座ってから大分時間が過ぎたけれど──うん、そろそろお尻が痛くなってきた頃だ。

 特にやることもなかった少女は気が付けばここにいたわけだけれど──何を思ったのか、立ち上がると、ふらりと歩き出した。

 煙草を咥え、吸い、そして吐く。その一連の動作の中に煙が上る描写がないのは、辺りが暗くて見えないからだ。

 歩いてどのくらいしたか。

 見れば目下に明かりが灯っているところがあるではないか。

 街だ。

 あそこに少女の家がある──ということはなく。

 少女の家は森の中だ。

 時々たまに街へ出ては家へ戻る。

 かれこれ千年のときをそうして過ごしている。

 まあ、街へ出たとしても、次また行くときは誰もかも皆々少女のことを忘れているのだけれど。

 あらまあ、驚くなかれ。

 彼女は毎回驚いているのだけれど。

 馴れる馴れないの問題ではない。

 いつまでそれが続くのか。

 

 さてさて、今日は何をしようか。

 暗い空を見上げ、へと足を運ぶ。

 そろそろお店が開く頃。

 さあさあ、何が待っているのやら。






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