真夏。

 人々は空を見上げて、世界樹のようにそびえ立つ積乱雲を見つめた。

 雲の中に黄色い光が見えた。

 ちょっと遅れて、ゴロゴロという音がした。

 

「飽きたわー」

 とバチを置いたのは、積乱雲に住む鬼だった。

「いい加減やめようぜ。今時流行んないよ、太鼓とか。そもそもこの太鼓変な音するし」

「そんなこと言ったって、俺たちの存在価値はコレだろ」

 もう一匹の鬼は、ゴロゴロと太鼓を叩きながら言う。

「そんな悲しいこと言うなよ。やりたいことの一つや二つあるだろ」

「じゃあ、なにしたいんだよ、お前は?」

 鬼がにやりと笑って、パチンと指を弾くと、雲の上にドラムセットが現れる。

「これよ」

 鬼は、太鼓への鬱憤を晴らすように滅茶苦茶にドラムを叩く。それを見ていたもう一匹も、ギターを顕現させて、こっちも滅茶苦茶に弾く。

 

 音楽は雨と一緒に降り注いだ。

 人々は立ち止まって、次の雷を待った。

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