シャワー狂い

 私は仕事終わりに熱いシャワーを浴びるのが大好きだ。シャワーを浴びるために仕事をしていると言ってもいい。仕事が辛く苦しいほどに、シャワーの快感は高まる。


 今日は早朝に新聞配達を行い、それが終わったらコンビニのレジ打ち、次に引っ越し業者の手伝い、そのあとはーー覚えてない。意識が朦朧としていたのかもしれない。もう何日も寝ていないし、ひどく頭が痛いから。


 とにかく私は待ちきれず、服を脱ぐのも焦ったく、そのまま浴室に入る。

 蛇口を捻ると、熱い水が体を打った。

 気持ちがいい。


 ーーいや、この程度のはずがない。

 あれだけ、寝る間も惜しんで働いたのに、これで終わり? そんなはずない。


 もっと、シャワーの温度をあげよう。


 ーーああ、気持ちがいい。

 もっとだ。

 赤色へ回す。

 

 湯気がすごい。

 まだ回す。


 肌が沸騰する。

 回す。


 肉が茹だる臭い。

 回す。回す。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る