僕の父さんの話
父さんは龍だった。
自分の社を持っていて、人間たちはよくお参りに来た。大雨が降ったり、日照りが続いたときには特に熱心に、野菜や酒や、色々なものを持って来た。そして父さんは、たちどころに厄災を払った。
そんな父さんも、僕が大人になる前に自分の社を畳むことになった。時代の流れだった。
龍を辞めるときも、父さんはいつも通り、笑っていた。
「お前は龍にはなるなよ、今の時代じゃ流行らないから」
と茶化したように言った。あはは、と僕も笑った。
僕が大人になったとき、母さんは、父さんが祝い酒を飲み過ぎてすっかり寝てしまったあと、ぽつりと言った。
「父さんはね、龍になって、自分の社を持つのが夢だったのよ。向いてないくせに、どうしてもなりたいって、厳しい修行をして、やっと龍になったの」
知らなかった。
龍を辞めるときの、父さんの笑顔が思い出された。
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