晴れた日の傘

 この晴れた日に、傘を持って歩いている女子高生がいる。傘の持ち手には、彼女の名前がはっきりと書かれている。


 道行く人は首を傾げる。今日は一日快晴の予報だった。一体何のために、あの子は傘を持っているのだろうか?


 夕方、その女子生徒は傘を昇降口に置いたまま帰っていった。

 

 数日後に雨が降った。予報にない、突然の雨だった。下校時刻の生徒たちは、途方に暮れたように空を見上げた。


 そんななか、傘置きを物色する男子生徒。彼は1本の傘を取り上げる。

 それは持ち主の名前がはっきりと書かれた、晴れた日の傘だった。

 彼は人知れず、ニヤリと笑って傘を頭上に広げた。

 

 瞬間、傘の内側からチョークの粉が降り注いだ。


 真っ白になった男子生徒の眼前。


 傘の骨組みから垂れ下がっていたのは、『泥棒!』と書かれた紙だった。

 

 それから、その高校で頻発していた傘の盗難は激減したのだった。

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