メイド・トゥ・スクールの仕事放棄

ちびまるフォイ

凡人の作る天才学校

集まった4人には学校が渡されることになった。


「これから、みなさんにはイチから学校を作ってもらいます。

 ルールからカリキュラムまですべて決めてください。

 ただし、先生として学校には関われません。システムの構築のみです」


手元には「がっこうのもと」と書かれた紙粘土。

あっけにとられる4人の前で説明は続く。


「そして、学校を卒業したあとは未来へと移動し

 もっとも人類に功績を残した人を調べ、

 その出身学校が一番多い人の学校が優勝です」


かくして、4人は学校を作ることになった。


「結果的に未来で良い功績を生む、優秀な人間を作るためには

 徹底した管理と完璧なる勉強カリキュラムが必要ザーマス!」


1人はとがった形状の学校を作った。


使用する教材はもちろん、在籍する先生や

入学させる学生の水準から制服のデザインまで思いのまま。


その学校では、1年生にして大学級の知識が得られるようになり

優秀な生徒は飛び級によりさらに知識を深めることができる。


生徒にはそれぞれ先生がマンツーマンでひっつき、

勉強進度を徹底的にフォロー。


学校のそばには寮を備えて、通学時間の無駄を省き24時間のほとんどを勉強にあてる。


「これで最強の人間ができるザーマス!

 人類の未来は明るいでゴザイマース!!」


「そんな詰め込み学校じゃ行き詰まっちまうぜぃ」


「なんだとザーマス?」


もうひとりの作った学校は対象的にまるい形状の学校だった。


教科書や決まった制服も用意されていない。

学校の中には備え付けの遊園地があったり、ゲーム施設もある。


「こんな子供の欲求を100%叶えただけの学校で

 良い人材が育つわけないのでゴザイマース!!」


「机に座って学んだ勉強がその後の社会でどう生きるってんだぃ?

 遊びを通して自分の道や適正を見極めるほうがずっと良いに決まってる」


ガリ勉学校とは異なり、誰もが楽しみで待ちきれないように学校へ来ていた。

病気で休んでしまっても学校に行きたいとダダこねるほど。


「ふ、ふん! そんな遊び人養成所なんて、無意味ザーマス!」


「卒業生のその後が楽しみだなぁ?」


競っていると、ひときわ暗そうな3人目の家ができあがった。

2人にくらべて周りにはなにもないごくシンプルな形をしていた。


「なにザマス? このくっそ地味な学校は……」


「……クリエイティブスクール、です……」


学校には黒板も教科書すらなかった。

あるのは最新鋭のパソコン機器と行き届いたネットワーク環境。


生徒たちは最新機器を駆使してより実戦的な社会勉強を行う。

在学時点で社会に溶け込めるように、さまざまなビジネスルールも習得される。


それだけでなく、集団作業になれるために

複数人のグループ作業も組み込まれておく。


「……学生と社会人との差を限りなく埋められれば、

 より社会に適した人材を多く排出することできる、です……」


超優秀な人間を生み出して貢献するのではなく、

そこそこ有用な人間を大量に生み出して人類に貢献する。


質よりも量を重視した実戦的な学校だった。


「ざ、雑魚がいくら群がっても天才が起こす革命には劣るザーマス!」

「そうだそうだ! こんなパソコンだらけの学校で学べるかぃ!」

「……結果が楽しみですね……」


出来上がった3人の注目は、4人目の作る学校へと移った。


「なんだ、まだ全然できてないザーマス?」


「僕、優柔不断なんです。まだ思いつかなくて……」


「安心しろぃ。今さらどんな学校を作ったところで、

 オレたちの学校より優れたものにはならないから好きに作れぃ」


「はぁ……どうしよう……」


ずっと悩んだまま学校をあれこれ作るだけなので、4人目は放置された。

やがて学校の卒業生が排出されると時空転移により未来へと移動した。


「さて、どこの学校出身者が人類に影響を与えてるザーマス?」

「当然オレに決まってろぃ!」

「……まあ僕、ですね」


結果を見て4人は言葉を失った。


「「「 4人目が1位!? 」」」


4人目の学校卒業生がもっとも偉大な功績を残していた。


超絶詰め込みカリキュラムで作られた学校の卒業生は、

その過酷な学校生活のストレスで廃人となる人や

自分の知識をひけらかすばかりであまり貢献してくれなかった。


遊びを多く取り入れた学校の卒業生たちは、

卒業後も遊びムード丸出しだったために夢と現実のギャップに悩み

夢を追えなくなるや急にやる気を失い貢献しなくなってしまった。


あれだけ実戦的な内容を詰め込んだ学校の卒業生は、

その後に多くの会社で同じ仕事ばかりを任されるようになる。

ルーティン作業で自主性を食いつぶされるうち、貢献する芽を失った。


「いったい、どんな学校を作ったんザーマス!?」

「優柔不断なお前が最高の学校を作るなんてありえねぃ!」

「……どんな最新機器を駆使したの……」


「えぇ……僕は、なにも作ってないですよ」


優柔不断な4人目の学校は性格を表したように中途半端だった。

はてしなく未完成で、ルールも未完成で、カリキュラムも穴だらけ。


「こんな欠陥だらけの学校でいったい何が学べるザーマス!?」


納得いかないため参加者たちは未来にいる卒業生へと突撃リポートした。

答えはみな同じだった。



「学校? ああ、本当にどうしようもない学校でした。

 だからもう学校に任せずに自分で勉強や努力するようになったんです。

 今じゃその経験がなによりも財産ですよ」

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