第29話

「え、てかこれ昼間君のアカウントじゃん」

「そう、朝っぱらからポエマーな呟きしてんの。つか笑美知らなかったの?」

「あたし今日一度もツイッター開いてなかったんだよね」


 たはは、とぎこちなく笑う田宮。案ずるな田宮、俺はやってすらいないから。

 しかしあの昼間がこんな気持ち悪いツイートをするとは。

 昼間晴斗ひるまはると、名前からして明るそうな奴だが実際もそうで気さくで人当りもよく周りからの信頼も厚い。さらに見てくれも良く女子からの人気も高い。言ってしまえば花ケ崎の男版、実に憎たらしい。


「んで黒金、このきもい呟きから勘づくことない?」


 棚橋がスマホ越しにそう訊ね、俺は再度きもい呟きを読み返す。

 どれどれ…………うーんやっぱ何度見ても身の毛がよだつな。押し付けがましい自己陶酔者の迷惑好意にしか思えない。強いて言えば……。


「この強く運命を感じたっていう先週の件とやらが気になるな。それ以外はゴミだ」


 狂気の中の正気、真面こそ怪しむべき、そう考え俺は口にした。


「私も同意見、ゴミってのも含めてね。じゃあ逆に先週って何があった?」

「う~ん先週か~……あたしとガネ君が共闘を誓った――」

「ちょっと黙っててくんない!」


 俺は呆れるほど見当違いなことをのたうち回る田宮を黙らせた。彼女は若干涙目になっているが気にしていられない。


「先週は目立った学校行事はなかったがクラスでは席替えをしてるな……ってまさか!」

「そう。そして今、昼間の隣は花ケ崎」

「つ、つまりこの公開告白宣言の相手は……花ケ崎ってことか……」


 唖然とする俺にこくりと小さく頷く棚橋。

 そのまま俺は視線を花ケ崎がいる方へと向ける。どうやら花ケ崎と昼間、それに両者の取り巻き含め楽しそうに談笑しているようだ。


「――ッ」

「が、ガネ君どうしたの? そんなお弁当にがっついて」


 俺は未だ手つかずの弁当を一気にかきこみ、お茶で胃に無理矢理流し込む。


「はぁはぁ……ちょっと心頭滅却してくるから席外す」

「え、ちょっとガネ君!」


 田宮の心配そうな声を振り切り俺は教室を後にする。その際、花ケ崎と一瞬目が合った気がしたが恐らく俺の勘違い、突然舞い込んだ情報に変に意識してしまってるだけと自分に言い聞かせた。

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