第28話
「笑美達って夫婦漫才するほど仲良かったっけ」
棚橋のあっけらかんとした言い方には特に深い意味は無さそうで単なる興味からくるように聞こえた。
「えっとまあかくかくしかじかあって今はこのポンコツ――じゃなくてガネ君のお世話してあげてるって感じかな」
あれ今のどっち? 意識的? それとも無意識? どっちにしろハートブレイクされたことにかわりはないけど。
「ふーん。てっきり付き合ってるもんかと」
「そんな馬鹿な~。ガネ君だよ? 誰がこんなポンコツを好き好むのって話だよ。もし仮にいたとしてもよっぽどなもの好きかお金で買われてるかのどっちかだよ」
あ、もうこれ完全にわざとですね、怒り引き継いでますね。ポンコツを言い直す素振りすらなかったし『恋愛保証人』とは思えない発言だったし。怒りと共につけあがってますねこのくそアマ。
「そか。あ、じゃあやっぱ黒金ってマジで花ケ崎が好きなの?」
「――ッ」
棚橋の唐突な話題振り。しかも内容が内容で、俺は心臓を鷲掴みにされたような気分を味わう。
「ど、どうしてそう思う?」
「思うもなにも見てればわかるでしょ」
「だね、あたしもすぐに気付いたし」
お前も同調してどうするッ!
「だ、だよな~そう見えちゃうよな~。でもこれにはわけがるというか深い理由があるというか、とにかくそういんじゃないといいますか、ハハハ……」
「ふーん、そうなんだ」
そう抑揚のない声でつまらなそうに答えた棚橋は笑ってごまかす俺を特に追及しなかった。そのまま棚橋は田宮の机に頬杖をつきスマホを弄りだす。
「まあでも仮に好きなんだとしてもやめといた方が正解でしょ」
「えっと、それはつまり俺なんかじゃ相手にしてもらえないから身の丈に合った生活をしろてきな?」
花ケ崎の取り巻き達が言葉にしていたが、棚橋含め他の連中もきっとそう思っているのだろう。無理もない、俺自身もそう思ってるしな!
が、棚橋は首を横に振って否定の意を示した。
「違う違う、そんなんじゃなくてタイミングが悪いってこと。これ、見てみ」
そう口にした棚橋がスマホの画面を向けてきた。田宮も気になるのか俺の横から顔を覗かせるようにしてスマホを見る。顔が近く甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「ツイッターがどうかしたの?」
俺は恥ずかしさから上体を引いて距離をとった。そのことに田宮は気にする様子もなく勝手に話を進める。
「このツイート見てみ」
「なになに……『俺は決めた。先週の件で強く運命を感じたから。だから今週中に想い人にこの恋心を告げる。ただ一つ気がかりがあるとすればこの天気、雨ばかりで陰鬱とした空気が俺の告白を邪魔しているような気がするんだ。でも大丈夫、この愛がきっと打ち負かし晴らしてくれる。ここに綴った全ては恋に悩み苦しみ決意した男の独り言と思ってくれていい。過度な干渉は不要、静かに見守っててくれたら幸いだ』………………」
「な、なんだこのおぞましい怪文書みたいなツイートは……鳥肌がとまんねーよ」
田宮の読み上げた内容に思わず本音がだだ洩れてしまった。が、二人も同意見なのか異を唱える者はいない。
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