ダメガミ・ダメリーマンDEビューティフルゲームライフハアルイミチート

RYOMA

第1話 ダメだけど生きてます

さぼる為には仕事する以上の労力を惜しみなく使い、面倒な仕事を回避する為にはどんな嘘も平気でつく! これが俺のビジネススタイルである──


仕事している感出しまくりのメールのやり取りを上司をCCに入れてそつなくこなし、実際には何もしていないが、進捗がこうだ、仕様がああだと言葉で誤魔化して、後は下請けに丸投げというスタイルを五年間貫き通してきた──


そして──


あいつ実は何もしてねんじゃねえ? 口だけで案件全然進んでねえぞ! そう思われるのも納得の仕事の成果によって、とうとう会社から裁きが下る。


「ゲーム事業部へ異動ですか……」

上司に呼ばれて告げられたのは、ゲーム事業部への異動と、課長への昇進の話であった。

「まあ、昇進もするし──悪い話ではないだろ」

悪い話である──うちの会社のゲーム事業部は実績も無く売り上げはゼロ、完全なお荷物部署で社内ではゲーム事業部への異動は島流しと揶揄されているくらいであった。課長への昇進は追い出す為の最後のたむけだろう──

「まあ、いいですけど……」

だが、俺はそこらのサラリーマンとは根本的な考え方が違う。売上ゼロだろうが、社内からゴミ扱いされようが給料がでるなら問題ない、思いっきりサボってやろうじゃないか──



島流しと言われるだけのことはある──ゲーム事業部のオフィスは、巨大な本社ビルの隅の隅──こんなとこに部屋なんてあったのかと思うような場所に存在した。

「本日からこちらに異動になった下関です」

オフィスに、一人だけいたゲーム事業部の森野部長へ、そう挨拶する。

「あ……そう──」

森野部長は、興味の無さそうにそう答えた。

「森野部長、他の人たちはどうしたんですか?」

部長一人だけのこの状況に、流石に聞かないわけにはいかないだろうと質問した。

「みんな辞めたよ──今いるのは私と君と、もう一人……自宅作業でめったにここへはこない古都君だけだよ」

ほほう……課長に昇進もなにも、部下どころか誰もいないとは……ふっ……普通のリーマンおじさんならここで心が折れただろうが──俺には関係ない、誰もいないだと……好都合ではないか、こんなサボり放題の環境こそ俺にふさわしい。

「それで、森野部長、とりあえず何をすればいいですか?」

何も無いよと言う答えを期待したが、意外にも森野部長は一つの仕事を俺に言ってきた。

「アルティメット・ラーフィア?」

ゲームに興味の無い俺は、初めて聞くそのタイトルを口にした。

「そう、ゲーム事業部にある、唯一のコンテンツだ」

「それをどうするんですか?」

「まずはプレイしてもらえるかな」

ゲームして遊んでろってことか……ゲームはあまりやらないが、まあ、それも悪くない──言われるままにゲームをすることにした。


資料を確認すると、アルティメット・ラーフィアは、十年前にリリースされた、その当時、最高レベルのAIを搭載した完全体感MMORPGだそうだ。

リリース当初はそのゲーム性と、リアルな世界観が人気を博し、全盛期のユーザーは五百万人を超えた大ヒットゲームだが、多数の類似のゲームのリリースと運営の怠慢により、徐々にその人気が衰えていった。そして運営会社は別事業の失敗もありあっけなく倒産……アルティメット・ラーフィアの全データと権利はうちに売却された──


「なるほどな──こいつをどうにかして金にしたいんだな……まあ、こんな骨とう品のゲームなんて、一円にもなりゃしないだろうに」

──だが、俺がサボる口実には使えそうだ、とりあえずゲームをプレーしてみるか……


アルティメット・ラーフィアは、どうやらスーパーヴァーチャルリアルティー(SVR)のゲームのようだ。SVRは、エッチなやつしかやったことないが、家にもあるので取り扱い方法はわかる。


森野部長の話では、すべてのゲームデータがあるサーバールームに、SVRの端末もあるということでそこへ向かう。辺鄙なゲーム事業部の部屋のさらにその奥、隠し部屋のように目立たない感じで、サーバールームは存在した。


サーバールームからは、複数のファンが回る音が聞こえてくる──どうやらマシンは起動されているようだ。

中に入ると、大きなサーバーラックが三機設置されていた。部屋の中心には、酸素カプセルのような機械が置かれている。どうやら最新式のSVR端末のようだが……


「売り上げゼロの事業部によくこんなの導入できたな……」

文句でも愚痴でもない素直な感想を呟いて、俺はSVRを起動した。

初期設定は終わっているようで、すぐにでもゲームをプレイすることができそうだ、俺は持ってきていたペットボトルのミネラルウォーターをグビグビと多めに飲むと、カプセル型のSVR端末の上部入り口を開いて中に入った。


端末の中で横になると、プレイヤーの体調や異変を察知する、ブレスレット型のセンサーを装着して、SVRのスタートボタンを押した。

ピコピコと何かを読み込む音が聞こえてくる──そして女性の透き通った綺麗な声で、使用者の体調が良好な事が告げられ、シンクロ開始がアナウンスされた。

すると眠りに入るような感覚で視界がブラックアウトしていく──


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