第88話 見る事は見た
誰もいない教室。
見知った教室。
身体を蝕んでいた、赤い死は、無くなった。
身体に満ちていた魔力は、消失した。
身体に満ちるのは、哀しみと、虚無感。
ふと。
目の前に、美しい女性が。
この世の存在とは思えない美しさ。
一目で分かった。
この目の前の存在が……女神。
「お疲れ様です……
間接的に話すのも初めてな件。
「……女神様」
「はい、女神です」
女神が、朗らかな笑顔を浮かべる。
「
……
「女神様」
「はい?」
「女神様……お願いです、やり直させて下さい」
女神は、きょとん、とすると。
困った様に、唇に手を当て。
「あのね、
「そんなものはいらない……だから、お願いします。みんなを……救いたい」
女神は、溜め息をつくと。
「
女神は、微笑み、
「
「お願いします」
相手の技の知識は得た。
時間停止は俺を不利にするだけという事も分かった。
相手を倒す為のパーツは、幾万も幾億も足りないが……
それでも……首の皮一枚、繋がった。
女神は、呆れた様な笑みを浮かべると、
「さあ、頑張って下さい……」
意識が……遠退き……
--
「驚きました。まさか戻って来るとは」
ルシファーが、呆れた様な顔をする。
「ホダカ!」
「ホダカ殿!」
「ヒタカ!」
時間は既に動いている。
というか、多分、死んだ直後じゃなく、少し経ってるよね。
「ですが、死ぬ前とは何も変わらない。迷わず、逝きなさい」
くそ……相棒……何か……何か無いか?
<称号『私はシステム。攻略情報の提供など、する訳がありません』を獲得しました[……頑張って……下さい……]>
……
「見ておきなさい。もう一度、勇者を殺します。今度こそ、最後……」
ゴウッ
ルシファーの周囲に、7つの光。
「ヒタカ!!」
ハナが、ルシファーと俺の間に割って入る。
だが、赤い光はハナの存在を無視して飛び。
俺を──
紅い暴力が、俺を蹂躪する。
続いて、蒼い光が……魂すら凍る『寒さ』が、俺を八つ裂きに。
紫の光は、烈風の死。
茶色い光は、強烈な振動。
白い光は烈光。
深い闇が俺を貫き。
そして……
虹色の光が、身体を引き裂く……
「く……何て攻撃だ……」
反撃の隙が見当たらない。
何とか身体を起こすと、油断無くルシファーを睨む。
「……何故、生きているのですか……?」
ルシファーが啞然として。
いや、エメラルド達も、目を丸くしている。
何故ってそれは……
「勇者には、一度見た技は通じない。これは最早、常識」
「そなたは、2撃目以降は見ていなかった筈だが……?」
失礼な。
見たよ。
受ける前に死んだけれど。
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