第81話 やぶさかでは無い
で。
「エメラルドの頭上の数字……2 Days 23:30:22って何だ?何だかカウントダウンしているようだが」
「ふむ。ヒタカには見えるんだね。所謂、RPGでいう、システムインターフェースが見ているのかい?」
「そこまでしっかりしたものではないな。会話ログも無いし、コマンドボタンもない。ステータス表示は出せるし、そこからスキル獲得とかもできるけれど」
「なるほど、限定的、という訳か……」
「え、敵に色々情報を与えて良いのじゃ?」
……?!
「し、しまった、つい……ドゥーアー、お前、卑怯だぞ」
「あ、ごめんよ、ヒタカ。ついいつもの癖で……君と一緒に色々考えて、道を探ろうとしただけなんだ。許して欲しい」
くそ。
いつもの調子で聞かれたから、ついつい話してしまう。
「それで、カウントダウンしている時間、これは何なんだ?」
「それは簡単だよ、ヒタカ。ドッペルンゲンガーに会った人には、死の因果が生じる……3日後に死ぬ、ただそれだけだ」
……え。
<称号『フフフフフフフフ』を獲得しました[1]>
笑うな。
「え、私死ぬんですか……?」
「いわゆる、死の宣告、だね。効果を発揮する前に、僕を倒せば大丈夫だよ」
倒せないんですが。
何というか、緊迫感の無い流れで、いつの間にか凄まじい危機的状況。
「妾もなのじゃ……?」
「いや。君は死の因果から解放された身……というか既に死んでるしね。死の宣告は効果が無いよ」
「ほっ、安心なのじゃ」
「……マリア姫が無事?なのは良かったですが、私は……」
エメラルドが呆然と呟く。
「……ドゥーアー、エメラルドの死の宣告を解除してくれ」
「それはできない。不可能、という意味だ」
何……だと……
「だから解決方法は1つだけ。僕を殺す事……僕は、ヒタカに殺されるのならやぶさかでは無い。どうかな?」
「ドゥーアー、お前を殺すにはどうすれば良いんだ?」
間抜けな質問だ。
「そうだね。僕の嘘を、本当にしてくれれば良い。だが、ヒタカは手を汚したくないよね。なら……」
ドゥーアーは、俺達を一瞥すると、
「僕はヒタカの恋人だ」
そう宣言した。
--
「ほらほら、あーん」
「あーん……」
ドゥーアーが料理をすくい、俺の口に近づける。
ぐぬぬ……
ぱくり
食べると、ドゥーアーが嬉しそうに微笑む。
こいつは何がしたいんだ……?
「美味しいかい?ヒタカ」
「ああ、勿論だ。凄く美味しいよ」
エメラルドの手料理だしな。
「お口にあって良かったです」
エメラルドが、ぽっと赤くなって呟き……うわ、可愛いなあ。
「ああ、何時も通りとても美味しいよ。エメラルドの手料理が食べられて、本当に幸せだよ」
「そんな……でも、お世辞でも嬉しいです」
「お世辞じゃないさ。毎日僕の為に手料理を作って欲しい」
「はう……ホダカ……」
エメラルドが可愛らしくそう呟き。
……やっぱり、これ、脈あるんじゃね?
「……ねえヒタカ。今のヒタカの彼女は、僕だよね?」
え。
「ドゥーアー……人の心はそう簡単には変わらないよ。俺はエメラルドが好きだ。そうそう、お前の冗談に付き合える訳が無いだろう」
「ホダカ?!」
「のじゃ?!」
あれ、何か口走ってはいけない事を口走った様な。
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