第65話 駄姫共

「ホダカ殿が、エメラルド姫が好きだと言ってたのじゃ」


「マリア姫?!」


いきなり裏切られた?!


「ごめんなさいなのじゃ……エメラルド姫は怖いのじゃ……」


マリア姫が涙目で言う。


「ほ……ホダカが私を?!えっと……」


ちらり


エメラルド姫が座り込み、上目遣いで見てくる。

うわ……可愛い……


「事実だ。俺はエメラルド姫、貴方を大切に思っている」


「はい……私もその……お慕い申し上げています……」


これって……両想い?


「ともかく……朝の事は、ただの事故の様ですし……これからは、マリアも、私と同じテントで寝る事、良いですね」


「のじゃ……」


ですよね。


「その……そういう事をするのは、私が優先です。ホダカを独占するつもりはないですが、出し抜かれるのは許しません」


そういう事ってどういう事ですか。


<称号『子作りじゃないですか』を獲得しました[1]>


飛躍しすぎだろ。

まずはデートして、それから手を繋げるようになって、それから……


<称号『一緒にお風呂に入ったり、生の肌を愛撫したり、キスも何度もしているのに、今更ですか……?』を獲得しました[1]>


あれは猫。


「と、ともかく、丸く収まったのじゃ。出発の準備をするのじゃ」


「あ、そ、そうだな」


頷き、立ち上がる。


……あれ。


これ、マリア姫についてくるなって、言えない雰囲気だよな。

今更だし。


--


「ヘキサグラム……順当じゃな」


マリア姫が、考え深げに頷く。


「魔物の宝物庫……誰が言い始めたのか……」


エメラルド姫が呻く。


「魔物の宝物庫なのじゃ?確かに、強い魔物や珍しい魔物が多いから、ある意味観光資源にもなっていたのじゃが」


「いえ、1年前、ヘキサグラムも滅びたんですよ」


「英雄王が治め、冒険者ギルド本部があったヘキサグラムが滅びたのじゃ?!」


マリア姫が驚きの声を上げる。


「召喚死パイロ……あいつの伝承がある国だな。召喚と魔物……間違い無く、パイロの蠢動なんだろうが」


「そうですね。名前と、召喚術に優れている……それしか、我が王家には伝わっていません」


「我が王家にもじゃ。そもそも、他国に自国の伝承を伝えるのは御法度。ご先祖より伝わった概略しかないのじゃ……」


<称号『使えないですね、この駄姫共』を獲得しました[1]>


悪いのは神だろ。

ややこしい事しやがって。


「今の俺達の力で通じるかは分からないが……やれるだけやってみよう」


<称号『大好きな修行しなくて良いんですか?せっかくスキルとかが戻ったのに』を獲得しました[1]>


意外と今までなんとかなってきたからな。

時間が無い。

とにかく、やれるだけはやった方が良い。

今こうしている間にも災厄は蠢動し……明日にでも、世界を滅ぼす謀略が実行されるかも知れないのだから。


<称号『急いては事をし損じるのですが……』を獲得しました[1]>


それは分かっているんだけどね。


数日の行程の後。

ヘキサグラムへと到着した。

ここまでは順調。

意外と、俺って実力ついていたんだな。


途中、クラスメートに会った。

結界石を破壊してまわっていた。

とりあえず、城に戻って大人しくしているように頼み込んだ。

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