第22話 侵入者
半月後。
マイホーム購入の為、ギルドを訪れる。
手続きの方法が分からないので、おっちゃ──ギルドマスターに聞こうと思ったのだ。
が、入って秒で後悔した。
知り合いがいる。
「組長、組長じゃないか!!やはり、無事だったか!」
「やあ、花園。久し振りだね」
組長って、ただの学級委員長の事だ。
才能溢れる面々で牽制しあった結果、押し付けられた。
教諭の手伝いや、司会などを嫌がっただけかも知れない。
「これで安心だ。あとは組長、君が指揮をとってくれ。まさに船頭多くして状態でね……」
「おいおい。俺は俺でやる事があるんだ。まとめ役は華田のやつに任せれば良いだろう?」
「華田はお前の傍でだけ輝くタイプだからな。組長、お前が必要なんだ」
そういうのは、女の子に囁いてあげて下さい。
「……分かったよ、組長。あと一つ聞きたいんだが」
「うん?」
「王女の奴を知らないか?」
王女って。
王族は全て捕えて処刑したと聞いたが。
そもそも、俺は廃棄された身。
普通に考えれば、俺の所には来ない。
「捕まえたんじゃ無かったのか?」
「いや……王女だけ逃げられてな。事前に漏れていたのか……内通者がいたか……隠し通路でもあったのか……」
「まあ、放っておいても良いんじゃ無いのか?生活力も無さそうだし」
「まあな」
花園が頷く。
そうか、王女さん逃げたのか。
まあ、俺には関係が無い話だ。
花園と別れ、ギルドマスターにマイホームの相談をして。
建物を決めてから、改めて相談するという話になり。
候補だけ貰い、ホーム……というか、回復の泉に戻った。
洞窟に住んでいるんだが、本当に小屋でも建てたほうが良いんじゃ無かろうか。
何かスキルあるかな?
--
「あの……すみません……」
誰も知らない筈の寝床。
一応、トラップも仕掛けてあったのだが。
訪問者。
やつれ、顔を隠しているが……美しい声……そして、耳に残っている……?
女性。
虚ろな意識を、女性に向け……
「君は?」
「私です、エメラルドです!」
布を取ったその顔は……凄く美人で……
「王女様?」
「はい、そうです。勇者様!」
何で俺の所に来たの?!
俺、キミに廃棄された立場ですよね!
あと、勇者じゃ無いぞ?!
そもそも、どうやってここを知ったの?!
ギルドマスターのおっちゃんだって知らないんだぞ?!
「勇者様……思えば、最初に気づくべきでした。魔王の事を教えて頂いたのに、私が聞く耳を持たず……」
いや、確かにその単語は出したけどさ。
でも、実際には魔王いないじゃん。
「勇者様の活躍は、神託にて聞いておりました。死の導師オラリドゥの企みを阻止し……病の魔王グネディアに狙われた私の命も救って下さいました」
知らない二つ名が増えとる。
噂に尾ヒレ背ビレ。
「突然、戸惑いますよね……貴方の所に来た目的は……」
王女様は、俺を見ると。
うわ……やっぱり可愛い。
その瞳は、潤み。
「私を、殺して下さい」
「ちょ」
「もちろん、殺す前に何をして下さっても良いですし、殺した後に何をなさっても構いません」
「ちょっと、ちょっと」
何言ってるのこの王女様あああ?!
<称号『殺して欲しいと言ってますね』を獲得しました[1]>
そういう意味じゃない。
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