とにかく嬉しい
「親孝行だと思ったら、今から何かしてごらん。それだけで違うもんだよ」
母さんの葬式でおばさんに言われた一言だ。
親孝行する相手がいなくなった直後で「今から何かしてごらん」も何もないもんだ。
あの頃の俺は子供みたいにむかっ腹を立てて、おばさんの顔も見ずに無言で背を向けたんだった。
きっと思いっきり顔に出てただろう。
そんな俺の反応を見て、子供の頃と全然変わってない、なんて周りは笑ってたのかもしれない。
すげー恥ずかしいじゃん。
今度会ったらおばさんに謝ろう。
今になってみると、おばさんの言葉は確かに一理あるんだよ。
墓参りを欠かさない、仏壇に好きだった花や菓子を供える、実家の庭の草むしりをする、近所付き合いを大切にする等々。
冷静になって頭を働かせればこうしていくらでも出てくる。
母さんが好きそうなことだの、やってやると喜ぶことだのを思い出して実践すればいいってことだ。
俺が真っ当な人間になってちゃんとした生活を送るだけで親戚やら知り合いは「あそこは親の育て方が間違ってなかったんだ」と評価してくれる。
それだって立派な親孝行だろう。
あの頃と違って今の俺には親孝行する相手がいる。
母さんが生きてる。
これだけで涙が出るくらい嬉しいんだ。
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