第十六章
第十六章 そして、手を伸ばす
大きな喧嘩になってしまった四人。一日半経っても、事態は好転しないでいる。苛付きを募らせる緋菜。連絡が返って来ないと携帯を見る三人。全員がモヤモヤしながら仕事をこなしていた。
休みを一日挟んでも、緋菜は未だカリカリしていた。苛立ちが治まらない。
文人の為に確認をしたことに反論され、終いには自分が間違っていたと証明されてしまった。更には、元カレと別れる時に言われた言葉を掘り返され、叱られたのである。昌平や文人にも聞かれ、もう誰にも泣き付くことは出来ない。全部陽のせいだ、と恨んでいるのである。
緋菜の気持ちを思うと、陽は苦しくて堪らなかった。今、もしかしたら人生で一番、苦しんでいるかも知れない。だけれど、きっかけは陽自身。傷付けただけで終わりにはしたく無いが、今直ぐにアクションを起こすわけにもいかない。
そう思い悩んでいても、自分のことを考えなければならない時はやって来る。それこそ、苦しくても逃げてはいけないことだった。
携帯を見つめ、昌平はため息を吐いていた。緋菜から、返事が何もないのだ。昌平に返事がなくとも、文人や陽に返したりしていれば良いが、きっとそれも望めない。恋愛感情ではなく、友人として物悲しさを覚えていた。
そんな昌平を見ていた瑠衣。先輩風を吹かせながら、励まそうと手を差し出した。
陽から頼まれたように、緋菜とはいつも通りでと思っている文人。だが、返事のない携帯。それをチラチラ見ながら、残った仕事を片付けていた。
その時、電話が鳴る。ピリッと緊張が走ったが、上手くやり遂げ安堵したのも束の間。文人にも大きな試練が迫って来たのである。
足踏みしているようで、少しずつ、四人の立っている場所が変わり始める。そこから先に、幸せがあるのか。それは誰も分からない。ただ届きそうなところへ、それぞれが藻掻きながら手を伸ばし始めていた。
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