第15話 しばしの眠りを

ーーーー体を、切り裂く。


「ゴポッ…」


腹が、熱い。カイロのような優しい温かさだ。


腹を見ると、鉤爪が突き刺さっている。


「あっ…がっ…」


そして暗殺者は俺の体から鉤爪を引き抜く。


「全く…手こずらせやがって」


腹から、温かいものが流れ出る。


全身が、熱い。


こんな時、【鎧】はどうしようもない。


【器】…【器】で、何ができる…?


駄目だ…これは完全な…『詰み』、だ。


あぁ…待て…行くな…


そっちには…







「キャアアアア!!!」


もはや声ですらない悲鳴をあげて、彼女はその恐怖を抑えようとする。


だが、無意味だ。


人間が、いや生物が最も恐れること。


そう、「死」。


いや、あの暗殺者が来た時から感じていた。


だが、最後の頼みの綱が、もう目の前で事切れようとしている。


まだ、騎士が1人居るが、あんなのが敵だ。


あぁ、死んでしまう。


こんな所で。


学園にすら辿り着けず。


何一つ成せず。


自分はここで、死ぬ。


…ならば。


…ならばッ!!!


最後までッ!!!!!


抗ってみせるッ!!!!!!






「うああああぁぁぁ!!!!」


めんどくさい。


こんなしょぼい魔法を連発したところで、意味が無いということは分かっているはずなのに。


あぁ、今まで殺してきたやつの中にも、こういう奴がいる。


普段から、最後まで守られてばっかりで。


そんな実力など芥にも届かないのに。


最後に、抗う。


そんな意気地無しを。


「死」の恐怖に背中を押されて、漸く戦うようになる。


そんな奴が、自分は…自分は…ッ!!


「「大っ嫌いだッ!!!!!!!!」」

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