幕間7
アルファゼロとの死闘を制したクロガネに、ウニモグからモニターしていた真奈は安堵した。
隣でモニターしていた出嶋が一息つける状況と見て、クロガネの多機能眼鏡との通信をONにする。戦闘中はクロガネの妨げにならないよう切っていたのだ。
「――流石だね。同じデミ・サイボーグでも機械化と性能に差があったにも拘わらず圧倒するとは。怪我もしていてブランクを感じさせない戦闘力……病院での失望発言は撤回させてくれ」
『……それはどうも』
覇気のない応答に、真奈が反応する。
「大丈夫?」
『いや、ちょっと疲れただけだ』
「さっきは結構撃たれてたけど……」
『うん、すんげぇ痛い。我慢できない程じゃないけど』
心配だが、軽い口調とバイタルサインから深刻な負傷はしていないと判断する。
「……無理はしないでね」
『ああ。ところで、美優とは通信できないのか?』
「――無理だ。恐らく彼女のハッキング対策で、最上階のネット回線は切断しているのだろう」
美優の安否が解らないのは辛いところだ。
「――時にクロガネ、良いニュースと悪いニュースがあるんだけど」
『……悪い方からで』
「――この先に、君のトラウマが待ち構えている」
「なッ!?」本人よりも真奈が驚愕する。
「――しかも二体」
『二体ッ!?』今度はクロガネが引きつった悲鳴を上げた。
僅かな間だが重苦しい沈黙が流れる。
『……良いニュースは?』
「――そのショットガンに装填された徹甲弾なら倒せる……けど、ここで悪いニュースが追加だ」
『何だ? 二体から三体に増えたか?』
「――多数の〈ヒトガタ〉が接近中。弾切れは勿論のこと、無駄弾は撃つな」
『無茶ぶりだなオイ』
「――接敵まであと三〇秒、警戒を」
『了解――って、もう来たぞッ!?』
眼鏡に仕込まれた小型カメラ――クロガネ視点の映像に武装したオートマタの大群がわらわら現れ、最も近い個体の頭部がショットガンで吹き飛ばされた。
「鉄哉!」真奈の悲鳴が上がる。
「――あ、ゴメン。さっきの『あと三〇秒』は、ドラマの録画が始まるカウントだったわ」
『
「――君の邪魔になるから音声カット。ガンバッテ」
『遅い――』
心ない激励に対するクロガネのツッコミが遮断される。
無音の主観映像には、無数の〈ヒトガタ〉相手に大立ち回りが展開されていた。
ふと、出嶋は隣から鋭い視線を向けてくる真奈に気付く。
「――どうした、ドクター真奈?」
「……貴方は酷い人だ」
「――ああ」
露骨な敵意に狂人は頷き、
「――よく言われるよ」
愉快そうに口元を歪めた。
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